376号  1996年7月

― 第153回例会講演  1996.4.23

激変する木材産業と林業とのかかわり

日刊木材新聞  論説委員   佐 治 成 男

 

 

はじめに

日刊木材新聞の佐治です。本日は林業同友会の例会にお招きいただきありがとうございます。平素は大変お世話になっており、この席をお借りして厚く御礼申し上げます。

お話をする前に丁重な御紹介をいただき痛みいっていますが、私は昭和29年10月に日刊木材新聞社に入社し、それ以来新聞記者として木材産業界でお世話になってきました。

この42年間を振り返りますと、最近ほど大きな変化に遭遇したのは初めてです。かつて何回かの大きな変化、例えば、外材が大量に輸入された昭和36年には供給サイドの変化があり、木材産業界が大きく変わったのを経験しました。次が昭和48年の石油ショックを契機とした、いわゆる供給サイドによって木材産業界が変わってきました。その次が昭和53年の第二次石油ショックの時期で、再び供給サイドが揺れ動き、業界も変わらざるを得ませんでした。

過去二回の大きな波を合わせて考えますと、その変化は供給サイドが中心でした。しかし、最近の変化は供給サイドの変化も勿論ですが、特に平成4年以降は需要サイドというか、川下が変わってきています。川上が変わり、川下が変わって、現在木材産業界が大きく揺れ動いていると思います。

これは一体どういうことか、お手元のレジメに従って要点を説明させていただきますと、現在の木材産業界が当面している大きな変化がお分かりいただけるかと思います、逆に申しますと、皆様方の方がよく御存知ですから釈迦に説法かも知れませんが、いま起こっている変化を、もう一度振り返ってみる必要があると考え、資料を作りました。

 

ここ数年の変化の底流

  現在起こっている変化を大きく分けると、三つに分けられます。その一つは自然保護と地球環境の問題で、世界的にみて伐採制限の問題があります。二つは円相場の急変です。円相場は一体いくらくらいが正しいのか、これについては議論のあるところですが、国産材にとっては1ドルが106、7円といったところでは、採算がとれないことがはっきりしてきました。三つは「価格破壊」を背景とした産業構造の激変です。

 

世界的なディスインフレと価格破壊

「価格破壊」は東西の冷戦が終結してから起こってきた問題で、その後価格決定のメカニズムが変わってきたと言われています。従来は、原価プラス適正利潤が販売価格であったものが、最近は販売価格から適正利潤を差し引いた残りが原価に変わってきました。

今年の1月に、マクドナルドが220円のハンバーガーを80円で3週間売り出しました。売り上げ個数は4,990万個で前年同期の10倍ということです。価格を下げれば売れるという事実です。何故安くできたかというと、世界90ヶ国のチエン店で、徹底的にどこから、どういう方法で、どういう材料を仕入れたらよいかを研究した結果です。安売り作戦でありながら、利益も大幅に伸びたと言われています。一方住宅産業にも、このような「価格破壊」が起こってきました。

 

住宅産業の価格破壊

(1) 大手住宅メーカー、頭打ちに

ソ連邦の崩壊により、東西の冷戦が終わったのが4年半前の平成3年12月で、これを契機に東側の経済圏、つまり計画経済下の20億人が、西側の市場経済になだれ込んできました。しかも20億人の平均年収は、西側先進国、日本と比較すると年収の差は10分の1から100分の1で、安い労働力、労働人口が仕事を求めて動き始めました。それによって先進諸国産業の加工部門が、海外移転を始めました。日本の木材産業部門もしかりです。このようなことから、木材の流通形態も変わってきたといえます。

これらのことを総合して考えていただきたいのは、その一番の動機は、平成3,4年までは日本の住宅着工の25%のシェアを占め、年間500棟以上を手掛けていた大手ハウスメーカーが、平成6年から7年にかけてそのシェアを22.3%に落としました。この落ち込みに対する対策として打ち出されたのが、住宅価格の値下げです。年間500棟以上を建てる業者を大手ハウスメーカーと考え60社を選んだのが表1(図表省略)の全住宅ランキング(日経商品情報)です。また住宅産業者の規模別シェアは表2(図表省略)のとおりです。

いま申し上げましたように、超大手、大手の年間着工戸数は平成5年では24%でしたが、平成6年には22%に落ち込みました。平成7年の予想は23%程度と考えられます。全体でみてみると中堅が伸び、超大手、大手が頭打ちで、年間50棟以下の小手の一般大工、工務店は下降しています。これが現在の変化の主流です。何故このような結果になったかの原因は、大手ハウスメーカーの売り上げ不振にあります。

売り上げ不振の背景は何かというと、販売経費が高すぎることです。例えば住友林業では、一人のセールスマンが売る年間の販売戸数は6、7棟といわれており、セキスイハウスはマンションを含め12、3棟です。大手ハウスメーカーはセールスマンを増やせば売り上げは伸ばせると思いますが、現在我が国の住宅着工戸数の140万戸は、出来すぎの数字です。

世界的な流れからみて、日本の人口が1億2千万人とすると100万戸から120万戸が妥当な数字と思われます。とするとハウスメー力ーは、いまここでセールスマンを投人して固定費を増やすことは得策ではありません。セールスマンを増やさず、売り上げを増やす方法を考えねばなりません。となると価格を引き下げるためには、セールス販売からカウンター販売、つまりお客さんに来てもらって売るという形に切り変えていかねぱ現在のシェアは維持していけません。

平成5年5月には積水ハウスが『セントレージ』の20%値下げを発表し、それに追随してミサワホームの『デビュー自由空間』、大和ハウスエ業の『ユトリエ3』が同率の値下げを発表しました。

値下げの背景は、住宅部品を4分の1に減らすことと、海外生産に切り替えるといったことをテーマに値下げを発表したわけです。大手が下げると、当然中堅、小手も下げざるを得なくなります。

関西地区では平成5年の秋から7・5・3という動きがでてきました。これは従来の坪当たり単価70万円台の高級木造住宅は50万円台に、坪当たり50万円台であった一般木造住宅は30万円台にせねば売れなくなったということです。このような現象が起こったことによって、業界が大きく揺れ動く背景をつくりだしてきました。

(2)政府も住宅価格引き下げに動く

  大手ハウスメーカーの値下げと平行して、政府も住宅価格引き下げに動きだしました。その最初は平成6年1月に細川首相が『住まいの21計画』により、住宅の一人当たりの広さを30%増やして40uにし、その代わりに建築コストを30%下げるといった私案を公表しました。これにともなって平成6年3月18日には、建設省がアクションプログラム(住宅建設コスト低減に関するアクションプログラム)を発表しました。アクションプログラムの主な内容は次のとおりです。

@ 平成6年から12年以内に住宅建設コストを、これまでの3分の2にする

A 住宅部品、設備等の規格化と標準化

B 施工業界の改革、施工ロボットの導入、外装一体パネルの技術開発

C 資材流通の合理化、中小工務店の協業化、共同仕入れ

D 建築関連の諸規制の合理化、各種手続きの迅速化

E産直住宅・輸入住宅の普及促進

以上のことから輸入住宅の問題が起こってきました。

続いて3月25日に、建設省が『新世代木造住宅供給システム』を発表します。公表された12のシステム(現在は15システム)は表3(図表省略)の通りです。

例えば、平成5年10月に発足した住友林業のビルダーズシステムは、会員数900社、年間1,800棟を目標にa.プレカット部材(構造・造作)の供給 b.ユニット部材(階段・収納ユニット・枠付き建具など)c.デザインパーツ(床・壁・天井)部材供給を行うことをメインとしています。

これによって最も痛手を受けたのは、年間2,3棟を手掛ける一匹狼的な小手の大工・工務店で、年率5%の割合で減っていっています。大手は大手で現状維持か、右上がりの対策を立ててきますが、中堅クラスも値下げに踏み切らざるを得ません。これが現在の木材流通ルート、ルート販売を変えてきています。また、現在プレハブ大手の海外調達率は50%を超えたと言われます。

以上申し上げたことを、現在の変化の背景としてみていただきたいわけですが、その他、咋年1年間に起こったことについて説明したいと思います。

 

今何が起こっているのか

(1)住宅の低価格化現象から来る住宅資材の低価格化

先程より申し上げていますことの延長線上にあることですが、坪当たり20万円台の木造住宅、輸入住宅等が出現し、低価格化現象が起こってきました。具体的に申しますとアイフルホームテクノロジーの『ベイシック3』といった商品は、坪当たり26万8千円で、ミサワホームの『自由空間』が29万9千円で、エスパイエルの『コモハウス』が31万7干円で売り出されています。

現在20万円台の住宅は、全国で25、6種販売されていますが、JR栗東駅の裏に建設された竹中工務店のマンションは、坪当たり36万円台で話題になっています。このように価格を下げてきているところが、昨年の大きな流れであったと思います。以上が川下の変化ですが、では川上はどうかというと、川上にもかなりの変化がみられます。

今まで外材は丸太中心に輸入されてきましたが、特に昨年頃から製品輸人、製材品輸入に変わり、昨年後半からは部材輸入、つまりコンポーネント輸入といった形に変わってきています。これらが住宅資材の流通を大きく変える問題として表面化してきました、さらには昨年の阪神大震災で、その変化が加速されています。

阪神大震災後の構造別新設住宅着工戸数の推移(表4)(図表省略)をみてみると、2×4工法住宅の伸びに驚かされます。特に震災の関係で、兵庫県は3倍になっていますし、全国的にみても1.5倍になっています。

私たちはこれまでの木造在来工法と、木質系プレハブと、2×4工法の三つを合わせて木造住宅と考えていますが、その総計は前年比マィナス8%と落ち込んでいます。このうち2×4工法に飛び抜けた数宇がでたのは、震災に強かったという情報が流れたためで、この点は皆様も事情をよく御存知なので省略させていただきます。

(2)木製品の関税引き下げのテンポ早まる

 昨年の川下の木材消費の変化と同時に、川上でもかなりの変化がありました。今年の4月1日に発表された米国通商代表部の96年版「貿易障壁報告」や、咋年9月末の301条でも木製品は監視品目になり、APECでも関税を早期に撤廃するよう要求され話題になりました。

(3)資源問題も再燃のきざし

  資源問題もかなり動き姶めており、4、5年間の外材産地価格は、外材産地価格推移(表5)(図表省略)にもみられるように大きく変化しています。特に米松丸太の値上がりには非常に厳しいものがあり、本年2月には戦後最高の1,320ドルという価格で現在輸入されています。今後の資源問題は樹種別、あるいは地域別に波状的に起こってくることを意味していると思います。海外の川上からの圧力も無視できなくなっていますので、頭の隅に入れておかねばならない問題だと考えます。

(4)集成材JAS規格が抜本改正に

  今年の7月から集成材の規格が変わります。集成材の場合、従来のJAS規格は5枚合わせでしたが、この度の規格改正では2枚合わせでもよいことになりました、ただし厚みが5pということですから、10.5pの管柱を作るには3枚が必要です。

接着剤もレゾルシノールのほかに、イソシアネートも認可されます。

現在、集成材の問屋流通の仕入価格は、5枚合わせの集成管柱10.5pで1本当たり2,100円から2,200円が相場ですが、サンプル輸入の北欧3枚合わせだと1本1,700円で入ってきます。釜山まわしにすると1,600円で輸入できるようです。これは神戸港がハブ港の機能を失っているからです。以上の価格は、今年2月の1ドルが105円の時点のものです。

このような事態になると、何が起こるかを考えねばなりません。現在の木材の流通は、一般の木材業界のルートと、建材ルートがありますが、2枚合わせの登場で、ヤング系数、材料強度で取り引きされる比率が高まり、そうなると木材が建材ルートに乗ってくることも考えられる時代が来つつあります。

(5)4年ぶりの住宅着工減

平成4年以降起こっている変化で、昨年大きく身にしみて変わったと感じたことは、木材の消費量が4年ぶりに減少したということです。これが業界の姿に、また変化の拍車をかけてきたと言えるのではないかと思います。

我が国には、木材の消費に関する川上の統計は多くありますが、川下の統計は全くといってよいほどありません。日刊木材新聞では全国の建築用木材消費量(表6)(図表省略)を一つの傾向としてとりまとめました。これは住宅だけでなく、全建築の構造別の着工数量をだしています。

平成3年には137万戸の住宅着工があり、その年の木材消費量は1,890㎥であったものが、平成4年には3.3%増え1,950万㎥に、平成5年には2,000万㎥を超え、さらに平成6年には2,100万㎥と非常に変化が激しかったわけですが、全体のパイが大きくなっていたので痛切には変化を感じませんでした。昨年の平成7年には1,980万㎥とマイナス6.5%に落ち込みました。

,000万㎥の消費量は少ないのではないかとお考えでしょうが、これは製品の数字で丸太換算すると約2倍の4,000万㎥となり、川上の続計とつじつまが合うと思います。昨年は伸びが大きく落ち込んだだけに、業界が変化を強く感じはじめ、身構えねばならない時代になってきたことです。

最近、全国で住宅のフランチャイズ・チェーン方式が急増してきています。住宅業界の主なフランチャイズは表7(図表省略)のとおりですが、ロイヤリティが割高なため、加入したものは2、3年でノウハウを身に付けて独立するケースが多く、離合集散が激しいのが現状ですが、住宅のフランチャィズ方式は確実に伸びてきつつあります。

次に、昨年の輸入材についてみてみたいと思います。

(6)製品化・部材化の流れさらに進展

○ 米材

  咋年の丸太入荷量は696万㎥、製品人荷量は735万㎥と製品が丸太を上回りました。これは史上初めてのことで、特に3〜8月には円高(1ドル80円)による集中入荷がありました。3、4年前までは世界25、6ヵ国から輸入れていたものが、一咋年は83ヵ国、昨年は地球の裏側からも、円高の影響で85ヵ国ほどから木材が輸入されるようになり、しかも丸太に代わり製品で輸人され始めました。

○ 北洋材

世界中で環境問題がとやかく言われないのはロシアだけです。人口密度が低いので環境問題は取り上げられません。

昨年の丸太入荷量は510万㎥で前年比12%増、製品入荷量は40万㎥で前年比14%増となっています。ロシアは製材設備が不足しているので丸太で輸出せざるを得ないわけですが、いずれは製品化される流れにあると思います。昨年の日・ロ木材会議ではロシア側は年間1,000万㎥の輸出を希望してきましたが、現在丸太、製品を合わせて550万㎥です。

平成2年までは輸入量は減少の一途をたどりましたが、平成4年頃からは再び増加に転じました。それはロシアの国内事情、つまり外貨の分け前に問題があったからです。平成3年までは外貨を国が75%、民間(輸出する側)が25%といった割合いで配分し、残りをルーブルで行っていました。

しかし、年間300%という悪性インフレ経済下ではルーブルに価値がないので、民間業者はやる気をなくしていました。それが平成4年にはその割合いが半々になり、平成5年には民間が82%、国が18%に逆転し、一気に輸出意欲が盛り上がり、咋年は550万㎥に達しました。だが政情不安定なロシアでは、価格の乱高下も激しく、非常に見通しがつきにくいのが実状です。

○ 南洋材・合板

咋年の南洋材丸太の入荷量は624万㎥で前年比10%の減、製品の入荷量は147万㎥で前年比6%増となり、丸太よりも製品で、さらにコンポーネント(部材)で輸入してほしいといった希望があります。ここでも世界的な流れになりつつあります。

一方咋年の合板入荷量は424万㎥で前年比5%増となっています。そのうちインドネシアが296万㎥で前年比9%減、マレーシアは88万㎥で前年比75%と急増しています。

伐採量はマレーシア・サラワク州が昨年1,650万㎥でしたが、半分を州内消費に指定し、木材高度加工体制を強く打ち出しています。今後は丸太から合板、部材へと切り変わる流れにあります。

○ 輸人材全体としては

  昨年の丸太入荷量は2,235万㎥で前年比1%減となり、製品入荷量は1,186万㎥で11%増となっています。丸太が減って製品が増えたという意味は、国産材が食われたということです。昨年の我が国の外材と国産材の比率は、国産材が22.5%になりました。かつては7割が外材と言っていましたが、現実には8割が外材の時代に移りつつあり、国産材はどんどん追い詰められつつあります。

○ 材積で表示されない木材製品の輸入量

木材の輸人は材積表示されるものだけの統計を発表していますが、材積表にでてこない木材輸人が相当数あります。例えば、木材で作ったシステムキッチン(木製の台所家具)のようなもので、材積でなく金額で表示されます。大蔵省の通関統計で金額で表示されるものは13品目あり、ここでは木製の窓と枠、木製の戸と枠、木製の台所家具の3品目を取り上げました。

木製の窓と枠は、平成元年の25億円から平成7年には68億円と2.7倍に、木製の戸と枠は32億円から95億円と3倍に、またシステムキッチンは32億円から55億円と1.7倍に増えています。平成2、3年のバブル最盛期には、東京のグッドリビングショウでは1台2干万円、2千5百万円といった商品が売れましたが、現在は全く売れません。せいぜい1000万円から2000万円台のものです。

今年は金額では変わりがないので、したがって、金額では変わらなかったとしても、数量で相当増えているとみられ、今後ますます増加傾向にあります。これが木材産業に大きな影響を及ばすものと考えられます。

(7)木材産業倒産が増える

咋年1〜2月の倒産件数は387件で、前年対比で84件増加(27%増)し、倒産が増えてきています、その原因の大部分は、2、3年前まではバブル型であったが、一咋年あたりからは不況型です。つまり販売不振に変わってきています。

いま一つは、従来までの倒産比率は製造業者と販売業者が半々であったのが、咋年は流通業者が7割を占めるに至りました。いよいよい流通の革命、構造の変化が始まったとみてよいと思います。

以上が現在の大きな流れですが、一方では木材産業界への新規の参人が増えてきています。

(8)新しいビジネスチャンスの興隆

昨年ホンダ自動車の子会社のホンダコーポレーションが、木材部品の輸入販売に乗りだしました。また、一昨年は機械の専門商社山善が、また流通ではアルミ建材を中心に販売していたサッシルートが木材製品の取り扱いを始めており、流通業界では建材ルートとサッシルートが厳しい競争を始めています。

裏返してみると、新規参入があるということは、その産業が面白い、あるいは将釆性が高いということを示すものなのですが、一方、この中に身を置く業者にとっては、大変厳しい時代がきたといえます。昨年10月より12月までの2ヵ月間の新しいビジネスチャンスの興隆を、日刊木材新聞よりまとめてみますと表8(図表省略)のとおりです。

15、6年前になりますが、三菱と永大産業による大工・工務店売りを目標にしたダイヤハウジングという会社を作ろうとしたところ、大阪の木材業界の強い反対に合ったことがありますが、それに劣らないことが現在起こっています。しかし、以前のように反対するものは誰もいませんし、文句を言っても止めてもらえない流れになっています。

  一方、家具の輸人をみてみますと、平成元年1,300億円であったものが平成7年には2,300億円と増えています。輸入家具のシェアは咋年は15%ですが、将来は80%に達するような状況になってきています、現在ある国内の家具メーカー1万2千工場は、2千工場にまで減ると予想されます。

 

急激すぎる円相場の変動正確な「円」の評価は?

  OECDが1991年に購買力平価を発表しています。それによると1ドルは190円が正しいであろうとしています。パリティーレート(それぞれの商品で内外の価格が均衡する為替レート)をみると次のとおりです。

自動車  135円 ガソリン   700円

鉄 鋼  145円 トラック運賃 240円

小 麦 1180円 電力料金   290円

紳士服  195円 ビル建設   190円

ビール  225円 住宅価格   250円

  最近輸入住宅が半値で入ってくるといわれていますが、この辺の事情は生産性の違いではなく、1ドルが106円という為替相場のためではないでしょうか。輸入建材、輸人住宅が安い価格で入ってくるため、日本の山林経営が成り立たなくなり、崩壊寸前のところまで来ているのではないかと思います。

 

厳しい競争の時代へ

住宅の構造・工法別の人工数の例(表9)(図表省略)の単位面積当たりの人工数の比較をみると、木造在来工法は5.7人工、プレカットが4.3人工で在来工法とあまり変わりません。これはプレカット業界が厳しいことにもつながります。

2×4になると1.4〜2.6人工、それに対してプレハブは1人工前段です。これが流通を変えていく原動力になる気配がします。

大工数の推移の予測(図1)(図表省略)は、この10年間で3割減少します。となると住宅工法も変わらざるを得なくなり、工法が変われば流通も変わります。以上木材産業が大きな変化に直面している背景について述べましたが、これを背景に、現在一体何が行われ、何が考えられているかが本日のテーマかと思います。

 

国産材に明目はない、だが明後日がある

私は全国を回って「国産材に明日はない。だが明後日がある」と申し上げています。

明日とは何年先かと言われると困りますが、10年位と申し上げています。1ドルが150円から110円では国産材には明日はないと思います。しかし明後日がある理由は何だと聞かれると、また少し困ります。

我が国の木材消費量は、人口1億2千万人で年間1億㎥を消費していますので、1人当たりにすると0.8㎥となります。諸外国をみてみますとアメリカが0.8㎥、カナダが1㎥、イギリス、フランスが0.7㎥、イタリアが0.6㎥となっており、先進国の平均は0.6〜0.8㎥です。

中国はどうでしょうか、FAOの10年前の資料によると0.08㎥です。現在は0.1㎥くらいになっていますが、0.1㎥しか消費できないというのが現実なのです。インドも0.1㎥です。しかし、中国は近年年率10%を超える高度成長を続けており、外貨保有量も800億ドルを超えたといわれています。800億ドルといえば台湾に近づいたことですが、来年からは外債の元利償還も始まりますので、いつまでも800億ドルあるとは考えられませんが、今後段階的に伸びてくることだけは確実でしょう。

文化、文明の程度が上がってくると、木材消費量はさらに増えます。人ロ21億人で1人当たりの消費量が0.1㎥上がると1億2千万㎥増えることになります。この1億2千万㎥をどこの国が供給するのでしょうか。世界中をみても、供給できる国はどこにもないでしょう。そうなると木材価格は上がらざるを得ません。

価格は上がるが、上がった高い価格で売れるでしょうか。鉄との競争が始まり、アルミ、プラスチックとの競合もあるので、簡単には売れないと思います。売れなければ加工度を上げ、これらと競争していかねばならない時代になるでしょう。それが10年から15年先でしょう。私が国産材時代に明日はないが、明後日があると申し上げているところはここです。蓄積が増加している我が国の森林は、いずれ宝の山になる可能性が多分にあります。しかし、そこに至るまでの10年から15年間をどうすればよいかがテーマです。

本日御出席の頴川五郎様とは10年ほど前に、大阪の府木連でいろいろと議論致しましたが、正規戦では外材には到底太刀打ちできないので、ゲリラ戦しかないとの結論に達しました。

先ほども申し上げましたように、1ドルが150円の時代は簡単には来ないでしょう。従来日本の産業は輸出型でしたが、ここ2、3年は輸入型に変わってきており、外貨は減少してきています。輸人業者は円安、1ドル120円〜130円になれば倒産が始まります。このような事態は避けた方がよいので、客観的にみて1ドル110円前後が、最も居心地のよい線ではないかという気がします。しかし、国産材は1ドル110円では、どう考えても外材には太刀打ちできません。そうなると、この10年間はゲリラ戦で闘かわざるを得ません。

ゲリラ戦とは何か、端的に申しますと、一つは加工度を高め付加価値をつけることです。二つは地元の木材は地元で売ることです。例えば住友林業の家で一部の地区でやっているように、地元の木材を使用した住宅を看板にして地元で売ることです。ゲリラ戦にはこれ以外に沢山あると思います。

2年ほど前に滋賀県で、林業関係者と木材産業者で国産材需要拡大の会合を私が座長になってもちました。しかし、両者は絶対に同じテーブルに着きません。売手と買手で仕方がないかも知れませんが、林業家側からすれば、木材業界は林業家を騙している、収奪しているといった感覚があるようです。特に森林組合の方々には根強い反感があります。

申し上げにくいのですが、全国の森林組合を回りますと、頭の硬い年配の方が多いことです。山林労務者を例にとっても、人が集まらないと言っておられますが、少し考え方を変えて、山林労務者とはいわずグリーンキーパーというように呼称を変え、給与、厚生面などで身分の保証などを考えれば、都会の若者も集まるのではないでしょうか。

ゲリラ戦を展開するのであれば、両者が堅く手を結んでもらわねばなりません。硬いままでは、致し方ありません。切実な問題でもありますので、本日御出席の御理解ある皆様方には、是非御協カいただきたいと思います。

 

おわりに

今後約10年間は林業界、木材産業界にとって厳しい時代が続きます。これを乗り切るためには、私たちが提案した「ウッデイランド滋賀」の構想、つまり地元産の木材を使用した住宅を展示販売し、そこには木材の集散市場や木材加工施設を設備し、林業経営者と木材産業界が一緒になって、地元の木材を地元で売っていかねばなりません。しかしながら、現実はそう簡単なものではありません。

まとまりのない、中途半端な話になりましたが、これが本日のお願いであり、報告であることを御理解いただけたらありがたいと存じます。

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