11.鷹の訓練(1)
わたしが鷹狩りに用いる鷹はおもにクマタカで、全長80センチ、
体重3キロ、翼を広げると1メートル半にもおよぶ大きな鷹です。
勇猛で力強く、しかし、非常に繊細な性質をしています。
このクマタカを狩りができるように訓練するには、長い時間と
強い忍耐力が必要とされます。
訓練するといっても、他の動物たちに芸をさせるのとは根本的に
異質のもので、人間になつかせながらも、狩猟本能を呼び覚まさ
なければならないからです。
長い年月をかけて伝えられてきた巧緻を極めた訓練技術を文章に
するのは容易ではありませんが、その手順の概略だけを記してみ
ましょう。
訓練をはじめるのは、猟期に入る約1ヵ月半前(11月頃)で、
毎年やらなければなりません。訓練前の鷹は、何年いっしょに
暮らしていても野生に近い状態で、腕に止まることもないのです。
まず最初は、光を遮断した室内で腕の上に止めることからはじめ
ます。何も見えない暗闇の中では、野生に近い鷹もおとなしくな
るからです。数日間、鷹によっては1週間以上、ほとんどの時間
を闇の中でただ黙ってじっとすわっています。
鷹の気持ちが落ち着いて
静かに腕に止まっているようになったら、
こんどは明かりに慣れさせていきます。
はじめに小さなローソクを1本灯して
飼い主を確認させ、鷹に動揺がなくなると
徐々に明かりを増やしていきます。
完全に明るいところで腕にじっとしているよ
うになるまでに、1日10時間ついやしても
20日以上かかります。
このようして明るさに慣れさせたら、
腕に止めたまま戸外を歩き、外の環境に慣れ
させます。最初は鷹を興奮させないように
夜中に歩き、つぎは薄明りの朝に、そして
昼間の人通りの中に連れ出していくのです。
ここで大切なことは、歩くときに手をゆらし
てはいけないことです。クマタカは重たいので、ゆらさないように歩くのは大変なことなのです。
昼間に戸外を歩いても静かにしているようになったら、いよいよ狩りの訓練です。
まず、鷹を遠くからでも鷹匠の腕に戻るようにしなければなりません。
つづく
松原英俊