13.鷹の訓練(3)
鷹はそばにウサギがいても、空腹でなければ決して追いけようとはしません。
そこで、訓練と並行して、何度も絶食を繰り返して体の脂肪を削ぎ落とし、
狩猟本能を目覚めさせていくのです。
まず20日間の絶食、そしてお椀一杯200グラムの肉。つぎに10日間の絶食、そして椀一杯の肉。
つぎ1週間の絶食、肉。5日間、3日間と繰り返して
ギリギリの飢餓状態をつくっていきます。
餓死させてはなりません。鷹は死の直前まで毅然と
していますから、細心の注意が必要です。
鳴き声がかすれてきたり、口の中が白くなったり、
糞の色が緑色になったりすると非常に危険な状態で、すでに手遅れという場合もありますから、
そうならないように常に注意深く観察していなければなりません。
鷹匠は、鷹の体調をコントロールすることに最も神経をつかうのです。
鷹の体重は、絶食によって夏の3分の2くらいに
なります。一見残酷とも思える厳しい絶食ですが、
鷹と寝食を共にした絶対的な愛情の上に成り立っ
ていて、厳しさと愛情は決して矛盾するものでは
ありません。むしろ、厳しいからこそ信頼関係が
生じ、鷹と鷹匠は一体になれるのだと思います。
そして一体にならなければ、良い狩りなどできる
はずもないのです。
こうして仕上がった鷹と二人、いよいよ雪が降り積もった山へ狩りに出ます。
雪の上は獲物を見つけやく、道がないところも歩けます。
藪や潅木が雪に覆われ、木々も葉を落とした雪山は、
地上の小動物を追うクマタカにとって、絶好の狩りの舞台です。
もちろん、いくら雪山は狩りをしやすいといっても、獲物がいなければ話に
なりませんから、鷹匠は獲物の生態に精通していなければなりません。
また雪山は非常に危険ですから、山の地形を把握し、天候、気象の判定能力も必要です。鷹狩りは、鷹への愛情と訓練技術、さらにこれらの知識や能力が備わってはじめて可能なのです。
松原英俊