一方で、中学生のときに見たテレビ・ドキュメンタリー「老人と鷹」は、わたしにとってとても印象深い作品でした。老鷹匠と鷹の心のふれあいに感動するとともに、大自然の中で行われる勇壮な鷹狩りに魅せられてしまったのです。大学卒業を控えて将来の方向を考えたとき、わたしには鷹匠の道しかないように思われました。
わたしは子供の頃から自然に親しんできましたが、大学時代は授業そっちのけで山に登っていました。3000メートル級の山は大学時代にぜんぶ登っています。山ではいろんな動物たちに出会えますし、本当に自由だと実感できるのです。
大学3年を修了した春、とうとう1年間休学して山の中で暮らす決意をし、岩手県北上山地の山形村というところに移り住んでしまいました。農家に住み込ませてもらって、農業の仕事を手伝いながら村の人たちと同じように生活したのです。わたしは自然のなかで自然と一体になって生きていきたいという思いをずっと持ち続けていましたが、このころ、その思いは確信に変わったように思います。
そうして、大学卒業と同時に「老人と鷹」のモデルとなった沓沢朝治氏の門をたたいたのですが、沓沢氏は当時79歳という高齢で、簡単には弟子入りさせてもらえませんでした。何度も断られ、ついには家の近くに野宿して通い続け、ようやく弟子入りを許されたのです。
はじめての自分の鷹は、近くの山の名前から加無号(かぶごう)と命名しました。気持ちを通わせるための試行錯誤の日々、そして3ヶ月の特訓を経てはじめての狩りへ。加無号とわたしはその冬ずっといっしょにすごし、雪山を獲物を求めて歩きまわりました。しかし、結局獲物にはありつけませんでした。
つづく