鷹匠 松原英俊
Falconer : Matsubara Hidetoshi

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9.生きものたち(3)

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わたしはよく山に行ってテントを張ったり、
野宿をしたりするのですが、
そんなときの大きなよろこびは、
生きものたちに出会えることです。
これまでにいろんな出会いがありましたが、
その中から、おもしろいエピソードを
ふたつご紹介します。

あるとき一番高い峰の上で、テントも張らず、
寝袋だけであお向けになって寝ていると、
不思議なことが起こりました。
朝のはやい時間でしたが、わたしの額の上に
何かがちょこんと乗ったような気がして
目を覚ますと、シジュウカラという小鳥が、
たしかに額の上にいるのです。
「いったい何をしているんだろう?」
と思いながらじっとしていると、
わたしの髪の毛をくちばしで引っぱっては
飛んでいき、また戻ってきては引っぱりと、
同じことを繰り返すのです。
もしヒゲを引っぱりにきたら口でパクッと
つかまえてやろうと思っていましたが、
ヒゲの方には全然やってきませんでした。
そのシジュウカラはきっと、自分の巣の材料に
わたしの髪の毛がちょうどいいと思ったので
しょうね。
それにしても、どうしてヒゲの方に
来なかったのか、ちょっと不思議です。


何日も泊りがけで山に入っていたときのことです。
自分の食料として生きたチャボをテントの近くの
木につないでいたのですが、それが何ものかに
襲われてしまったのです。
沢の近くにテントを張っていたので、
犯人はイタチかテンだろうと思っていました。
ところが次の日、わたしがテントの前にいると、
タヌキのつがいが山の斜面をトコトコと降りて
きたのです。
チャボを殺したのは彼らにちがいありません。
わたしは怒っていましたので、
そのタヌキ夫婦をつかまえて、
本気でタヌキ汁をつくってやろうと思いました。
そこで、彼らをおびき寄せるために
テントの近くに残飯をばらまいたところ、
夕方になると決まった時間に姿を見せるように
なったのです。
タヌキたちはだんだんなついてきました。
そしてついに、鍋に入った残飯を差し出すと、
その鍋に首をつっこんで食べるようになった
のです。もう、つかまえようと思えば
簡単につかまえられる状態でした。
しかし餌付けするまで
1週間もの間、
毎日夫婦でやって来る姿を見ていると、
なんだかタヌキ汁にするのはかわいそうになって、
そのまま山を下りました。


                        松原英俊