「譜めくりの女」というDVDを見た。
交通事故にあって以来、ステージで緊張しすぎてしまう女流ベテランピアニスト。
彼女はヴァイオリン、チェロ奏者とともにトリオを組んでいて、
その譜めくりが必要だが、なかなか気に入った人物がいない。
そこに彼女の息子の子守としてやってきた若い女性。
かつてピアニストを目指したが、あることで挫折し、やめてしまった過去がある。
安心できる譜めくりを得て、ピアニストの演奏は安定し、
トリオにとって大きなチャンスもやってくる。
そこから先は言わないでおこう。
このDVDのすばらしいところは、
緊張したピアニストの演奏の不安定さが非常にうまい。
演奏はもちろん俳優ではなく、プロのものである。
一部にはコンピューター操作もあるように思うが、
緊張しきった出だしの音や、
途中で音をはずしてから、必死で立て直そうとするけれど
ますます深みにはまってしまう泥沼など、
やろうと思っても、ここまでうまくできるものではない。
逆に、音を入れたピアニストは、
この場面を思い出すと自分の本番に支障が出るのではないか、
と余計な心配をしてしまう。
今年の病院の忘年会でピアノを弾くことにしたので、
盛り上がる曲を、と考え、短いけれど少し手の込んだ曲を準備していた。
チャイコフスキー作曲-プレトニョフ編「くるみ割り人形」の「トレパック」と
ラフマニノフの「ショパンの主題による変奏曲」の
最終部を練習していたのだが、これがなかなか難しい。
本番10日前に、ラフマニノフを諦め、
トレパック1本に絞ったのだが、安定しない。
編曲したプレトニョフが得意な指の動きについていけない。
どうも良くない予感がする。本番で空中分解しそうだ。
気持ちが切れかけると、心の隅で手頃な曲を探しだし、練習成果が後退を始める。
結局、少し前から指ならしに弾いていたバッハのイタリア協奏曲と、
リストのわずか2ページの練習曲第一番、ショパンの「雨だれ」、
ホルストの「惑星」からよく知られた「ジュピター」の部分を抜粋、となった。
「雨だれ」と「ジュピター」は暗譜していないので、
忘年会参加者から二人に楽譜をめくってもらうことにした。
「楽譜は読めなくていいから、合図をしたらめくってね。」
と言って演奏スタート。
譜めくりのお仕事は、それぞれ1回だったけれど、
ちょっとドキドキしてもらえたかな、と思う。