らんぼうの連載記事
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学三年の頃を想うと、今も「オクラホマミキサー」が聴える。当時は、”男女七歳にして席を同じゅうせず”がまかり通っていて、僕らは古臭く厳格な中で育った。教師の鉄拳制裁や運動部のしごきなどは日常茶飯事だった。男女が話をするのもほんの立ち話だけ、一緒に登下校したりするとすぐ噂になり、もちろん異性と手をつないだりすることもなかった。
 僕らは中学を卒業すると、ほとんどが宮城県の公立高校に進むことが決まっていたが、宮城県の多くは男女別学である。また集団就職組もいたので、卒業が近くなるにつれて、お別れムードはいやが上にも高まった。
 そんな折り、女子生徒の中にフォークダンスをやろう、と言い出す者が出て、寒い校庭で踊り始めた。数日間男どもはニヤニヤしたり、今日もまた始まった、などと窓からチラリと眺めているだけだった。
 一週間ほどして、外を見ると数人の勇気ある男どもが一緒に踊り出した。あの野郎日和ったな、そうつぶやきながらも気がそぞろになった。そんなとき女子生徒が「南君踊ろう。男子が足りないのよ」と強く誘った。それまでにない意気込みだった。
 僕らはゾロゾロと輪の中に入り、生まれて初めてフォークダンスを踊った。女子達は張り切ってステップを教えてくれた。「オクラホマミキサーの曲」が一段と大きく流れた。
 広い校庭には、三年ばかりでなく、二年生や一年生それに教師も加わり、不思議な連帯感が満ちた。僕は母と相撲をとった六年生以来、たぶん初めて女性のしなやかな手を握った。その指の感触や髪の匂い、間近に見る笑顔は、とても甘美で、いつまでもこうしていたいと思えるものだった。
 僕は今も歌を作るときは、こうした原風景に帰る。心の奥にオクラホマミキサーが流れるのを聴いて、そこから出発する。そう、僕はまだあの時代にいる。

つづく

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日本経済新聞に連載されたものです
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