らんぼうの連載記事
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みなみらんぼう
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‘03年〜'05年まで日経新聞夕刊に大好評連載された“みなみらんぼうのスローライフ”が帰ってきました。セレクト版でお届けします。ある人はなつかしく、又ある人は新鮮な共感を持ってらんぼうワールドをお楽しみください。
 
リンピックの金メダルなどは、アスリートの目標であり、選手はそれを得るために力の限りを尽くす。それに対して、特別欲しいとも思わないのに知らないうちに得る神仏の恩恵もある。これを仏教用語で冥利(みょうり)という。
 以前このコラムで紹介したことのある、僕の親戚の南範子おばさん(81歳)は、僕の「メルトモ」でもある。英会話やパソコンをこなす。僕もタジタジのスーパーおばさん(本人は「おばあちゃん」と呼ばれるのを嫌がる)なのだ。
 この範子おばさんが今夏テレビ出演した。熟年層に圧倒的人気を持つテレビ東京系の「開運なんでも鑑定団」である。司会は石坂浩ニ、島田紳助などで、依頼人が持参したお宝を鑑定人が値踏みする、という番組だ。以前僕の知り合いが、巨人時代の松井秀喜選手のユニホーム一式を鑑定依頼し、三百五十万円の評価を得たことがあり、今やそのユニホームは、彼の経営する飲食店のメーンインテリアになっている。さて、範子おばさんの出した四角い壺(つぼ)は、いったいどう評価されるのだろう。
 この壺は約三十年前に、実家からいただいたそうである。詳しいことは知らず、結婚式の引き出物程度の扱いだったらしい。ただし、見るたびにその魅力を感じ、今の有料老人ホームに入るときも手放し難く、そばに置いたのだという。ある日、大原美術館でそっくりな色使いと形の偏壺を見て、範子おばさんはびっくりした。作者は河井寛次郎だった。
 デジカメで撮った写真をテレビ東京に送ったら、出演依来が来たのだという。さて、この河井寛次郎の壺は、はたして本物なのだろうか。おばさんの希望鑑定価格は五十万円。中島誠之助さんの鑑定価格は、なんと百五十万円。河井晩年の作で、大きさも手ごろと絶賛された。範子おばさんは思わず目頭を押さえた。
 テレビ出演は「みな興味は値段のことばかりよ。河井寛次郎といっても誰も知らないの」と言って、嘆きながらもうれしそうだった。ともあれ、これぞ範子おばさんの冥利だろう。めでたし、めでたし。

つづく

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