僕の家の近くに、西久保公園という緑に囲まれた場所がある。2人の娘が小さい頃(ころ)はよく散歩に連れ出した。サッカーボールをける少年がいたり、ゲートボールに興じる老人たちがいたり、砂場やすべり台で遊ぶ親子がいたりする。サクラの頃は花見会があり、盆の頃は夏祭りもあって、夜店で釣った金魚が10年近く生きていたりもした。小さな公園で、普段は忘れているが、どこか濃密に家族とかかわってきた。
5月の日曜日。西久保公園では町内のフリーマーケットが開かれた。うちのカミさんはママさんサッカーチームに所属していて、今年は「新しいサッカーボールが欲しい」と一念発起し、チームが持ち寄ったガラクタ、いや、お宝などを売る気になっていた。それで、ねえ、お父さんのこの靴一度もはいてないでしょう?という。先のとがったファッショナブルな靴も、げた箱の奥から引っ張り出され、1000円の値札が付けられた。いつかは晴れやかなパーティーの時にでもはこう、と思っていたのにお別れだ。
こうして部屋はネコが歩けないほど、売り物でいっぱいになり、カミさんも「全部叩(たた)き売ってやるわ」と意気込んでいた。ところが当日は今にも雨が降り出しそうな天気。前日からやきもきしていたが、何とかセーフ。僕も押っ取り刀で駆けつけると、なかなかの盛況ぶりだった。
知り合いの実効委員、山下倫一さんはニコニコし「いやあ、降らなくてよっかたですよ。みなみさんの奥さんの所は、けっこう売れてるようですよ」という。そっと近づいて見ると、老婦人が渋いポシェットをとり「これいくら」と聞いている。カミさんが「500円です。こちらのスカーフと一緒だと、700円」というと老婦人は「まあ」と驚き、700円を差し出すと、袋にも入れず持ち帰った。どうやら好調のようだった。僕も腰もみセットを500円で買った。
こんなわけで、サッカーチームの売リ上げは22000円強とか、ボール7個ぐらいは買えそうである。ただし、例の僕の靴は最後の最後500円でも売れず、我が家に帰って来た。
つづく
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