学生で賑(にぎ)わう御茶ノ水の一角、古き良き香りを残す、アテネフランセ文化センターで、客のほとんどが小粋な熟年者という、愉快なコンサートが始まった。
「少年サッチモが聞いたジャズ」で、この夜は第1回目である。出演は結成30周年になる外山善雄とデキシーセインツの皆さん。
ジャズの神様サッチモ(本名ルイ・アームストロング)が、少年時代に聴いたであろうとされる音楽を演奏するのだが、今風にアレンジするのではなく、できるだけ当時の譜面で、しかも当時のコルネットで吹く。当時というけれど、考えてみれば100年前にタイムトリップさせられ、サッチモ少年となって耳をそば立てているのだ。
外山さん夫婦は、1968年から5年間、サッチモの故郷ニューオーリンズに武者修行に出掛けた。そのときには存命だった、ニュ−オーリンズジャズの大物たちとのジャムセッションや交流のエピソードが、スライドとトークで綴(つづ)られ、大変説得力があった。「初めてニューオーリンズに行って、たまたま黒人の葬儀があり、葬列を組んで演奏する人たちを撮影することができました」と外山さんが語るお宝映像も良かったし、バディー・ボールデンからフレディー・ケパード、そしてサッチモの師ともいうべき、キング・オリバーの演奏へと流れていく。
ゲスト解説のジャズ評論家、瀬川昌久さんの話も軽妙でいい味わいだった。「フレディー・ケパードはレコード吹き込み第1号になるはずだった。しかし、レコードになったらみんなに真似(まね)されて駄目になる」と考え、吹き込みを断った、などという今では考えられないこともあった時代のようである。
さてこの演奏会の第2回は、10月12日(水)に同じアテネフランセ文化センターで催される。次は「サッチモの黄金時代」というから、おなじみの曲が並び一段と熱くなるに違いない。
つづく
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