千葉県には山というべき山はない。丘のようなものばかりである。それでも他から1頭抜き出た頂上に立つと、思いがけないほどのスケールに唖然とする。 富山(342)は滝沢馬琴の『南総里見8犬伝』ゆかりの地であり、登山と同時に、それらの伝統にふれることもできる。 房総半島の山なので雪も少ない。晴れた日を選んで登れば、東京湾をはさんで、意外な近さで富士山を仰ぐことができる。また伊豆の島々なども望めるので、開放感では他の山に負けない。できれば弁当とコーヒーセットなどを持って行き、展望台の上で贅沢なひとときを過ごしたいものである。 内房総の岩井駅から県道岩婦温泉方面に行き、温泉への分岐をさらに進むと、福満寺が左にある。そこが富山への登山口だ。トレイルは簡易舗装の道で、登山道らしくはないのが残念だ。 やがてナラやクリなどの雑木林の道となったり、少し荒れた感じの里山風になったり、まあ登山靴というよりは、ウォーキングシューズなどの方が軽快でいいかも知れない。 |

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明治生命保険代理社が発行しているPR紙「黎明」に連載された山歩きエッセイです。 |
| 1度鞍部まで下ったのち、やや急な登りになってやがて仁王門に出る。ここの境内の奥を少し登ると富山南峰であった。ここはあまり展望がきかないので、すぐに戻って石段を降りて左折する。この辺りは穏やかで、冬の陽差しを楽しみながら行くと良い。休憩所を過ぎて平坦な公園のような場所に着くと、そこが終点の富山北峰である。 山頂には立派なやぐらのような展望台が建っている。そこへ登ると眼下に富山の町が見え、そのうしろが浦賀水道。そして飛んで行けそうな距離に、3浦半島があり、その奥に伊豆や箱根の山々を従えて、ドカーンと富士山が望める。う−ん、海越しの富士山もなかなかのものであった。 山頂でゆっくりし、寒くなったら出発すれば良い。下山は少し戻って裏参道と呼ばれるコースを行く。この途中に例の南総里見8犬伝の伏姫ノ籠窟がある。僕は時間の関係で見学せずに帰ったが、その周辺は美しい峡谷になっていて、とても良い雰囲気の場所だった。 そして温泉は岩婦温泉である。ここは小さな温泉で、今風の立寄湯とは違って、なかなか味のある風呂だ。湯質も濃く満足感が高い。たぶん穴場!?だと思う。僕はゆっくり湯でくつろぎ、富山の町で寿司を食べて帰った。 |
| (C)Illustration: Takeshi Hinoura |

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