石灰岩がそこここに露出する地層のせいか、秩父地方は多くの草花の群生が見られる。今では野生のセツプンソウやフクジュソウを見ることが少なくなったが、両神村にそびえる四阿屋山(772) の山麓には、2月から3月に揃って花盛りとなる。 ただし、この両者土壌の好みがきちんと分かれているため、同じ場所に交わって咲くことはない。ちなみにフクジュソウは陽当りの良い南面に、セツブンソウの方はこもれ日の雑木林の中に咲く。 日本人は春の訪れにとても敏感な民族だと思う。庭にウメが咲いた、ウグイスが来たといっては喜び、山にマンサクが咲いたとか、ロウバイが見頃だと、テレビで情報が流れる。そしてソメイヨシノが満開になるまで「春よ来い、早く来い」とかしましいのである。 |

|
明治生命保険代理社が発行しているPR紙「黎明」に連載された山歩きエッセイです。 |
| それで、四阿屋山のこれらの花も、僕がこうして紹介するまでもなく、観光バスが連なって身動きがとれないほど混雑する。土日の陽気のいい日などにマイカーで出掛けたりすると、身動きがとれず、かえってストレスをもらって帰ることになりかねない。まあ、花の盛りはどこも満員なのだが…。 そんなわけで可能ならばウイークデーに出掛けましょう。僕が訪れた日はトントン拍子でフクジュソウ園の下の、山居広場まで車で入ることができた。 ここから標識に従って、両神神社奥社方面に登り出す。そのあと鎖のついた岩楊もあるが、ゆっくり行けば問題ない。落石だけは注意しよう。そこを越して少し行くともう山頂だ。狭いピークで、小木の間から日本百名山の両神山が目前に望める。 狭いのでここでは昼食など採らない。来た道を戻って、フクジュソウ園地に下る。ここの斜面一帯には、金色のパラボラアンテナの林立といった感じの花が、一面に咲いていた。うーん、どことなく健気で可愛いものだなあ。 そこから少し下ると淡い黄色のロウバイが咲いていたが、こちらは植栽されたものだろう。人混みから少し離れた陽だまりで昼食をすませ、次はセツブンソウの咲く堂上を目指す。徒歩で下れば約35分であるが、堂上にも車スペースがあるので、混みぐあいで決めれば良いだろう。僕らは車で下った。 セツブンソウは、森の妖精のような可憐な花である。淡い光の中で咲くせいか、どこかはかな気に見える。節分の頃に咲き出すというところから、この名が付いたのだというが、実際はもう少し遅く咲き出す。 陽性の感じがするフクジュソウと、陰性のセツブンソウ。この2つを同時に見て、気分良く春本番を迎えられてはいかがだろうか。 |
| (C)Illustration: Takeshi Hinoura |

![]() |
||||||||||||||||||||||||||
|