9月に入ると空が高くなって、ああ秋なんだなあとしみじみすることがある。するとアキアカネが飛んでいるし、虫の声がするし、知らないうちに身の回りは、秋色に染まっているのだった。 都会の秋を少し先廻りするには、山に行けば良い。東北の山なら1月の初めには紅葉するので、じっくり狙いを定めて訪れるのもいいだろう。 今回は1泊で行く、福島県安達太良山(1,700)を紹介しよう。ああ、そこなら1度行った、という人もいると思う。深田久弥の百名山にも選出されているし、高村光太郎の『智恵子抄』でも「あれが阿多多羅山、あの光るのが阿武隈川…」と歌われて、文学ファンにも大変人気の山でもある。 しかし、夏に1度登った道でも、秋に紅葉すると別世界になる。天候がすぐれない時に登った人など、秋の好天に恵まれれば、同じ山とは思えないほど、様相が変わっているので驚くこと請け合いである。そんなわけで僕はいつも、「1度登ったからといってもコースや季節が違えば、別の山だよ」と言うのである。 |

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明治生命保険代理社が発行しているPR紙「黎明」に連載された山歩きエッセイです。 |
| 僕も山の師匠の岩崎元郎さんに、初夏に連れていってもらった。あだたら高原スキー場から勢至平を経由して、くろがね小屋に1泊し、翌日登頂して薬師岳から下山したのである。まあ、いわゆるこれが最も1般的なコースだろう。 次は自分達で計画し、鬼面山の北にある新野地温泉に1泊した。ここの露天風呂から見る鬼面山はとても良い。冬だとなお良い。秋も真っ赤に紅葉するので、これまたすこぶる良いので困ってしまうほどだ。 で、翌朝鬼面山、箕輪山、鉄山、そして安達太良山と縦走するのである。縦走といっても初級、中級向きなので大丈夫だ。でも、縦走してきたよ、というとカッコイイでしょう?(笑)。 それだけで勧めている訳ではない。とにかく安達太良山の西側など、活火山のため峨々たるもので、紅葉とは無縁なのだ。そのくせ登山者が列をなして、山が騒々しい。 そこに行くと、北の鬼面山からのルートは瑞々しく、コースは分かり易いのに、ほとんど歩く人がいない。しかも、まさに綿を織りなしたような紅葉なのだから、絶対こちらのルートをお勧めする。 ついでに言うと安達太良山系の最高峰は箕輪山(1,718)で、知らないで歩いているうちに、この最高峰も極めることになる。 帰って来て岩崎さんに「秋の安達太良は最高ですね」と言ったら、「そうねえ、僕は冬が1番だと思うよ」と言われた。やれやれ。 |
| (C)Illustration: Takeshi Hinoura |

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