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整形外科

地元浦和医師会との連携をもとに、地域の第一線病院として整形外科疾患全ての診療を対象としていますが、特に、膝関節外科、股関節外科、脊椎・脊髄外科、手の外科、リウマチ外科に力を入れています。基本的に保存療法で治らない病気や怪我の手術療法を行っています。平成20年4月からは整形外科の一部門として人工関節センターを開設いたします。

膝関節

[症状]

歩行時の痛み/安静時の痛み/運動時の痛み/膝が曲がらない/正座が出来ない/まっすぐに伸びない/膝下が湾曲しO脚になってきた/引っかかり感がある/膝くずれ感/膝の腫れ/水が溜まる/血が溜まる

[疾患]

変形性膝関節症/膝関節リウマチ/半月板損傷/十字靭帯損傷/側副靭帯損傷/膝蓋骨脱臼/タナ障害/大腿骨顆部骨壊死/離断性骨軟骨炎/膝関節ねずみ/膝関節滑膜炎

[得意とする手術]

MIS人工膝関節置換術※1)/関節鏡視下半月板切除術※2)/関節鏡視下半月板縫合術※2)/関節鏡視下前十字靭帯再建術※2)/関節鏡視下滑膜切除術※2)/矯正骨切り術

股関節

[症状]

歩行時の痛み/安静時の痛み/運動時の痛み/曲がりが悪い/あぐらがかけない/子供の時脱臼していたと言われている/転倒して歩けなくなった

[疾患]

変形性股関節症/股関節リウマチ/先天性股関節脱臼/ペルテス病/大腿骨頭壊死/大腿骨頭辷り症/大腿骨頚部骨折

[得意とする手術]

MIS人工股関節置換術※1)/MIS大腿骨頭置換術※1)

脊椎・脊髄

[症状]

首・腰が痛い/手足の痺れや知覚障害/手足が麻痺して力が入らない/足が痛くなったりしびれたりして長距離を歩けない/箸がうまく使えなくなった/ボタンがうまくかけられない

[疾患]

頸椎椎間板ヘルニア/頚椎症性脊髄症/頸椎後縦靭帯骨化症/環軸椎不安定症/胸椎黄色靭帯骨化症/胸椎椎間板ヘルニア/腰椎椎間板ヘルニア/腰部椎間板症/腰部脊柱管狭窄症/腰椎辷り症/腰椎分離症/化膿性脊椎炎/化膿性椎間板炎/脊椎カリエス/脊椎・脊髄腫瘍

[得意とする手術]

椎弓形成術/脊椎固定術/髄核摘出術

手の外科

[症状]

手肘肩が痛い/うまく動かせない/骨が折れている/腱や靱帯が切れている/指が曲がらない/指の知覚が悪い/力が入らない/腫れ物がある

[疾患]

上肢のリウマチ/上肢の変形性関節症/指の腱断裂/靱帯断裂/神経断裂/上肢の骨折/TFCC(手関節三角線維軟骨複合体)損傷/腱鞘炎/ばね指

[得意とする手術]

指と肘の人工関節/上肢の外傷手術/手関節鏡

リウマチ外科

[症状](当院のリウマチ内科と協力して治療にあたっています)

手足の関節の痛み/関節のこわばり/関節の変形/関節の動きが悪い/関節が不安定/関節が腫れてきた/首が痛い

[得意とする手術]

人工関節置換術/関節形成術/関節鏡視下滑膜切除術※2)/環軸椎固定術

※1)MIS:minimum invasive surgery(最小侵襲手術)という方法でほぼ全ての人工関節置換術を行っています。人工膝の場合、最近の平均皮膚切開長は9.6cm、平均手術時間は77分です。股関節は最近の平均皮膚切開長9.6cm、平均手術時間109分です。

※2)関節鏡視下手術とは7mm前後の小さな切開から関節鏡という内視鏡を挿入して行う手術のことです。

整形外科全手術件数

 

平成17年度

平成18年度

平成19年4月〜9月までの6ヶ月間

膝関節

180

226

132

股関節

122

106

49

脊椎・脊髄

68

104

51

手の外科

314

334

168

その他

102

99

65

786

896

465

人工関節手術件数

 

平成17年度

平成18年度

平成19年4月〜9月までの6ヶ月間

人工膝関節

置換術

55

99

78

人工股関節

置換術

55

52

24

人工肘関節

置換術

3

4

0

人工指関節

置換術

6

30

5

107

185

107

  • 症状によっては他科を御受診いただく場合があります。

外来担当医一覧

新患

小川

佐々木

児玉

阿部

小原

再来

児玉・阿部

小原・阿部

佐々木・小原

佐々木・小川

児玉・小川

午後

 

 

 

 

(第三週予約のみ)
藤田

  • 月曜日午前中は外来手術(日帰り手術)も行っています。

  • 学会等で休診、代診の場合があります。

外来担当医紹介

医  師

役  職

専  門

児玉隆夫

整形外科部長

膝関節

小川祐人

医長

脊椎・脊髄

佐々木敏江

医長

股関節

小原 由紀彦

医長

手の外科・外傷

阿部 耕治

医員

手の外科・外傷

最寄りの北浦和駅から歩いて数分と近く、車でのアクセスも良いため、最近では浦和、大宮、与野、岩槻など地元さいたま市はもちろん、蕨、川口、春日部、越谷、鳩ヶ谷、戸田、草加、朝霞、和光、志木、所沢、蓮田、白岡、久喜、上尾、北本、菖蒲、杉戸、幸手、宮代など埼玉県内各地から当院に手術を受けにいらっしゃる患者さんが増えています。

人工関節センターのご案内(平成20年4月より開設)


  埼玉社会保険病院整形外科では地元浦和医師会との連携を元に、地域の第一線病院として整形外科疾患全ての診療を対象とし活動していますが、特に膝関節外科、股関節外科、脊椎・脊髄外科、手の外科、リウマチ外科に力を入れています。基本的に保存療法で治らない病気や怪我の手術療法を行っています。手術は過去数年で著しく増加しており、平成19年の手術件数は922に達しました。この数は3年前の約1.5倍で、県内でも最も勢いのある整形外科と自負いたしております。中でも私どもが得意とする変形性関節症や関節リウマチ等に対する人工関節置換術が年々増えています。平成19年には総数211関節に人工関節置換術を行いました(人工膝関節140関節、人工股関節51関節、人工肘関節1関節、人工指関節19関節)。また、膝と股関節はほとんど全ての手術をMIS (Minimally Invasive Surgery:最小侵襲手術)で行っています。更に今年からはMIS人工膝関節置換術のラーニングセンターとして国内の他の施設で人工関節を行っている医師を対象に実際の手術場での手術技術の研修を開始しました。私どもは今後より一層安全かつ低侵襲な人工関節手術の技術を開発し、満足のいく看護やリハビリとともにそれらを患者さんに提供すること、国内外の医療スタッフとの情報交換を密に行いその結果を患者様に還元すること、ならびに県内に広く当院の行っている人工関節手術を知ってもらうことを目的として人工関節センターを整形外科内に設けることにしました。受診の方法は従来の整形外科の受診方法と同様ですが、人工膝関節は主に児玉が担当します(初診水曜、再診月曜・金曜)。人工股関節は主に佐々木が(初診火曜、再診水曜・木曜)、人工肘関節と指関節は主に小原が(初診金曜、再診火曜・水曜)担当いたします。午前中の一般外来で患者様 に人工関節置換術を十分に説明して理解していただくことは容易でないため、特に数の多い人工膝関節に関しては月曜日の午後に専門外来を開設し十分な時間をとり、ご家族と一緒に説明を受けていただくように致します。新たな試みですが、整形外科部門一丸となり頑張って参りますので応援の程よろしくお願いいたします。

手術(膝)

人工関節とは?

人工関節置換術とは、軟骨の摩耗などによって悪くなった関節の表面をとり除いて、金属やポリエチレンなどの人工材料に置き換えるための治療法です。虫歯の時に悪い部分を削りそこに元々の歯と同じ形をした金歯や銀歯をかぶせるのと全く同じことを膝や股関節などの悪くなった関節に行う手術です。この手術により、関節の痛みがなくなり、痛みの無い生活を取り戻すことが出来ます。

人工関節の種類は?

当院で行っている人工関節には人工膝関節置換術、単顆置換型人工膝関節置換術、人工股関節置換術、人工肘関節、人工指関節などがあります。

人工関節手術の詳しい説明

↓人工膝関節置換術(TKA:Total Knee Arthroplasty)について

↓単顆置換型人工膝関節置換術(UKA:Unicompartmental Knee Arthroplasty)について

↓人工股関節置換術(THA:Total Hip Arthroplasty) について

●人工膝関節置換術について

(TKA:Total Knee Arthroplasty)

@.TKAの適応となる疾患

変形性膝関節症、関節リウマチ、大腿骨顆部骨壊死などです。

 

A.TKAの適応となる症状

歩行時あるいは階段昇降時の膝関節の痛み、跛行などの歩行障害、可動域制限(膝の曲がりや伸びが悪いこと)反対側膝関節や腰への負担増加による悪影響がある時などが挙げられます。

 

B.手術のタイミング

投薬・注射・杖・減量・筋力増強・理学療法などの保存療法で治らない場合や、関節鏡視下デブリードマン(関節鏡で見ながらの膝のお掃除)や高位脛骨骨切り術(O脚の矯正手術)といった手術でも痛みが緩和しない場合、あるいは痛みが再発した場合が人工膝関節の適応になります。60歳以上の方で、整形外科で一般的に行われているヒアルロン酸の関節内注射を1年以上続けても痛みが取れないときには人工関節の適応がある可能性がありますので、ご相談ください。

 

C.TKAの長所

  1. 歩行時、階段昇降時の痛みが楽になること

  2. O脚が矯正され脚の形が良くなること

  3. 歩行時の膝の外側へのぐらつきが取れて歩行が安定すること

  4. (4) 他の関節や腰に対する負担が減ること

D.TKAの短所

  1. (1) リハビリを含め2〜4週間の入院が必要であること
    遠方の方は入院期間が長くなる傾向があります。また、人によっては退院後もリハビリを続ける必要があります。

  2. 医療費が高額であり、保険を使わないと200万円近くかかること
    実際には医療費3割負担の方が窓口でお支払いして頂く金額は約60万円ですが、高額医療の対象となりますので最終的な自己負担額限度額は10-20万円程になります(年齢、年収により異なります)。約3ヶ月後に各保険組合事務所から差額分が返金されます。70歳以下の方は「限度額適用認定書」の交付を各保険組合事務所にあらかじめ申請しておくと病院窓口での支払いが自己負担限度額までとなり、立て替え払いをする必要がなくなりますので是非利用してください。ちなみに70歳以上の方で年収383万円未満の方の1ヶ月の自己負担額は44,400円です(これに食費が加算されます)。

  3. 正座が難しいこと
    TKAの場合、膝の曲がりは平均125゚ぐらいなので正座は無理です。

  4. 一生もつとは限らないこと

  5. 各種合併症が起きる可能性があること

E.合併症の説明
(最近の医療情勢から手術の良い面より、頻度の低い合併症等の短所が強調される傾向がありますが、人工関節置換術は非常に良い手術であり医療側と患者側がきっちり合併症を認識し回避する手段を講じていれば、予防は可能です。)

(1)感染:人工関節置換術は体の中に異物を入れるので感染に弱く、また一度感染すると治りにくいという問題点があります。その頻度は約1%とされておりますが、特に糖尿病やリウマチ歴の長い方の感染率が高いと思われます。感染はあらゆる時期に起こりうります。その治療としては初期であれば抗菌剤投与と膝の洗浄を行いますが、その治療がうまくいかない場合、人工関節を抜去し抗菌剤入りの骨セメントによる仮の人工関節を入れ、3ヶ月後ぐらいに感染が治まってから再度人工関節を挿入するという方法をとります。感染を起こすと局所の熱感・疼痛・発赤が起き、歩けなくなるのでおかしいなと思ったらすぐに病院に連絡をしてください。腎盂腎炎や扁桃腺炎など細菌感染が関係している病気は早めに治療を受けて下さい。また虫歯、歯周病の際に感染することが多いので歯科受診をきちんとしていただくとともに、抜歯の際には感染の予防目的に抗菌剤を服用することを勧めます。
(2)深部静脈血栓症:下肢の深いところにある静脈内に血栓という血の塊が生じたもので、予防しないと30-50%の人に発生します。症状は下肢の疼痛と腫脹ですが、全く無症状のことも多くみられます。生じた血栓が肺に飛ぶと肺血栓塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)を引き起こします。この合併症の採血での診断率は80%ぐらいです。確定診断を下すには造影CTを行う必要がありますが、この検査をするのは通常肺血栓塞栓症を合併している恐れがあるときだけです。治療は抗凝固療法を行います(主にワーファリンという薬の内服を行いますが、まれに副作用で出血がおきることがあります)。ただし深部静脈血栓症は治療よりも予防が大切です。当院では血栓予防のための弾性ストッキングをはいていただき、手術中から血栓予防のフットポンプというマッサージの機械を足に着けます。しかしながら最も大切なことは足首を積極的に動かすことと、早い時期に体重をかけて歩くことです。最近では血栓予防のための注射薬(フォンダパリヌクスやエノキサパリン)も登場し当院でも血栓症の既往歴がある方や血栓症のリスクが極めて高い方に使用しています。
(3)肺血栓塞栓症:深部静脈血栓が肺に飛び肺動脈を詰まらせたもので通称エコノミークラス症候群とかロングフライト症候群と呼ばれています。深部静脈血栓症の予防をしないと5%ぐらいの頻度で出現し1000人に1人ぐらいは命を落とす可能性があると言われています。深部静脈血栓症を予防することにより、その頻度を1/2から1/5程度に減らすことが出来ます。
(4)腓骨神経麻痺:術後つま先が外側に倒れるような格好をして長く寝ていると神経が圧迫され麻痺が起こることがあります。麻痺が起きると足背がしびれたり、足首や足の親指の動きが悪くなることがあります。医療サイドでも適宜チェックしますがご自身でも足がしびれたり動きが悪いと思ったらすぐに知らせてください。
(5)金属アレルギー:人工関節はクローム・ニッケル・バナジウム・アルミ・チタンなどから作られています。錆びることはありませんがごくまれに金属アレルギーを起こすと言われています。自覚的にわかる症状は皮膚の慢性湿疹です。ひどいアレルギーの場合は人工関節を抜去せざるを得ないこともあります。最初から金属アレルギーが判っている方にはセラミック製の人工膝関節を使用します。
(6)高齢者特有の病気: 肺炎、不整脈、心筋梗塞、脳梗塞、ストレスによる胃・十二指腸潰瘍、イレウス(腸閉塞)、胆嚢炎、可逆性の見当識障害(一時的な呆け症状)など家でも起きるような高齢者特有の病気が入院中にたまたま起きてしまうことはあります。70歳以上の人の約5%に見られると言われています。
(7)皮膚の血行障害、知覚障害:皮膚が薄く血流の悪い人(特にステロイドを服用している方)は皮膚が部分的に壊死を起こしたり縫合不全を起こし、回復に時間がかかったり皮膚の手術を追加で行う必要が生じることもあります(1%)。また皮膚を切開すると当然皮膚の中を走行している細い知覚神経が切れます。その影響で特に膝の手術の後には皮膚切開外側の知覚が鈍くなることがありますが、次第に気にならなくなります。


F.入院までの流れ

(1)手術が決まったら全身の健康状態をチェックし、手術が安全に行えるかどうか判断します。糖尿病、心臓病等がある場合はあらかじめ外来で内科の専門医の受診をしていただきます。
(2)人工膝関節置換術では、術中術後に併せて1000cc近くの出血が見込まれます。そのため当人工関節センターでは輸血を回避するためあらかじめ外来で自己血を800cc準備します(400ccの自己血貯血を2回行います)。
(3)当院のクリニカルパスに基づき。医師、看護師、理学療法士から自己血採血日、手術の説明日程、入院前の準備、術後の経過、リハビリについて説明をいたします。
(4)担当の医師から、人工関節の説明、手術の方法、合併症の予防方法、術後の経過などについて、詳しく説明いたします。説明には20-30分ほど時間がかかります。必ず家族の方と一緒に説明を受けるようにしていただいております。


G.手術が決まったら次の点にご注意下さい

(1)喫煙:当院は敷地内全面禁煙となっております。入院中の喫煙は出来ません。喫煙習慣により麻酔後の痰が多くなったり、傷の治りが悪くなったりする可能性があります。また人工関節置換術とは直接関係はありませんが、喫煙により骨折の治癒が悪くなることや、椎間板を傷め腰痛や椎間板ヘルニアの原因になる可能性があるとされています。
(2)虫歯治療、歯周病治療:可能な限り手術の前に治療をすませておいて下さい。虫歯や歯周病が原因で口の中の細菌が血液中に入り、人工関節術後の感染の原因になる可能性があります。
(3)湿布:手術が決まったら貼らないようにお願いしています。患部に湿布かぶれがおきると手術を延期せざるを得ないことがあります。
(4)パナルジン、バイアスピリン、バファリン等血液をサラサラにする薬は手術時の出血が止まりにくくなることがありますので、1〜2週間前から一時中止にしていただいております。医師の指示に従って下さい。


H.入院後の経過

入院日
(1)通常何の合併症の無い方は手術の前日に入院して頂きます。入院後病棟の案内、麻酔科の診察等があります。
(2)手術の前日の夜9時以降は禁食です。飲水は当日の朝7時まで可能です。
(3)人工関節の手術に際して浣腸は不要です。

手術当日(術前)
(1)人工膝関節の手術は火曜、水曜、金曜日の午後に行っています。
(2)朝8時頃点滴にまいります。
(3)麻酔は、麻酔科の医師が全身麻酔(眠って意識も痛みもない状態)に術後の痛みを緩和する持続硬膜外麻酔あるいは持続大腿神経麻酔を併用して行います。

手術
(1)当院ではMIS法にて手術を行っています。MIS法は従来の手術に比べ皮膚切開が短く(従来の手術10〜15cm、MIS法6.5cm)また筋肉への侵襲も少ないため術後の回復が早まります。
(2)手術の時間はMIS人工膝関節置換術でおおよそ1時間30分です。手術室に入ってから出てくるまでにおよそ3時間かかりますが、その間家族の方には待合室でお待ち頂いております。


I.リハビリ

リハビリは基本的に手術の直後から始まります。麻酔から覚めたらまず足首の運動を始めてください。その後足挙げ訓練も行います。人工膝の場合トイレには翌日から車いすで行っていただきますが、その移動の際体重を足にかけることは可能です。また膝に溜まった血液を抜くドレーンという管が抜けてからCPMという機械で膝の曲げ伸ばしを行います。理学療法士がレベルに応じた訓練を行いますが、通常は1週間前後で杖歩行が出来るようになります。入浴は術後1週で可能となります。術後2週頃から階段昇降訓練を始め、術後平均23日で退院可能となります。


J.人工関節の耐用年数

(1)現在使用している人工関節は10年持つ確率が95%、20年持つ確率も80%前後あると言われています。ただし乱暴に扱ったり、骨粗鬆症が急速に進行し人工関節との間にゆるみを生じたりすると5年も持たない人もいます。人工関節は器械ですから激しく使えば使うほどすり減ってしまいます。そのとき出る摩耗粉が、人工関節周囲の骨を溶かすことがあります。散歩や運動をして筋肉を鍛えても人工関節そのものを鍛えることはできません。
(2)長持ちさせるためには過酷な使用を避けること、自分自身の骨を丈夫に保つことが大切です。
(3)骨粗鬆症の治療薬(ボナロン、ベネット、フォサマック、アクトネル)には骨を丈夫にして人工関節を長持ちさせる効果があるとされています。この薬はかかりつけ医でも処方してもらえます。カルシウムの補給のつもりで乳製品を多量に摂取しても骨は丈夫にはなりません、かえって体重が増えて膝に対する負担がかえって増えてしまいます。


K.退院後の注意点

(1)リハビリ:通院リハビリが全く不要の人と、退院後最大5ヶ月間の通院リハビリが必要な方もいらっしゃいます。リハビリは当院と病診連携をしている整形外科開業医でも受けることができます。
(2)半年〜1年に一度はレントゲンを撮影し骨の状態、人工関節の状態を確認します。
(3)退院直後から1日30-40分の散歩は構いません。筋力が回復してきたら遠出してデパート歩きやバスや飛行機での旅行を楽しんでいただいても構いませんが、重い荷物を持ち運ばないよう、ショッピングカートや宅配便を上手に利用してください。テニスの様に飛んだり跳ねたり走ったりといった運動をすることや山登りをすることはよくありません。カートを使えばゴルフをすることも可能です。

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●単顆置換型人工膝関節置換術について

(UKA:Unicompartmental Knee Arthroplasty)

@.UKAの適応となる疾患

変形性膝関節症、大腿骨顆部骨壊死などのうち膝の内側あるいは外側だけの障害がある膝が適応になります。関節リウマチは現時点では適応外としています。

 

A.UKAの適応となる症状

歩行時あるいは階段昇降時の膝関節の痛み、跛行などの歩行障害、可動域制限(膝の曲がりや伸びが悪いこと)反対側膝関節や腰への負担増加による悪影響がある時などが挙げられます。全人工膝関節置換術(TKA)と違い可動域制限が著明な時には適応が無いことがあります。

 

B.手術のタイミング

投薬・注射・杖・減量・筋力増強・理学療法などの保存療法で治らない場合や、関節鏡視下デブリードマン(関節鏡で見ながらの膝のお掃除)といった手術でも痛みが緩和しない場合がUKAの適応になります。60歳以上の方で、整形外科で一般的に行われているヒアルロン酸の関節内注射を1年以上続けても痛みが取れないときにはUKAの適応がある可能性がありますので、ご相談ください。UKAの適応がある人はHTO(高位脛骨骨切り術=人工関節を用いないO脚の矯正手術であり自分の関節が残ります)の適応もありますのでどちらを選択するかは担当医とご相談ください。

 

C.UKAの長所

  1. 歩行時、階段昇降時の痛みが楽になること

  2. O脚が若干矯正され脚の形が良くなること

  3. TKAやHTO(高位脛骨骨切り術)に比べ、入院期間が短いこと

  4. TKAと比べ若干膝の曲がりが良く人によっては正座が可能になること

D.UKAの短所

  1. リハビリを含め約2週間の入院が必要であること
    遠方の方は入院期間が長くなる傾向があります。また、人によっては退院後もリハビリを続ける必要があります。

  2. 医療費が高額であり、保険を使わないと140万円近くかかること
    実際には医療費3割負担の方が窓口でお支払いして頂く金額は約40万円ですが、高額医療の対象となりますので最終的な自己負担額限度額は10-20万円程になります(年齢、年収により異なります)。約3ヶ月後に各保険組合事務所から差額分が返金されます。70歳以下の方は「限度額適用認定書」の交付を各保険組合事務所にあらかじめ申請しておくと病院窓口での支払いが自己負担限度額までとなり、立て替え払いをする必要がなくなりますので是非利用してください。ちなみに70歳以上の方で年収383万円未満の方の1ヶ月の自己負担額は44,400円です(これに食費が加算されます)。

  3. 一生もつとは限らないこと

  4. 各種合併症が起きる可能性があること

E.合併症の説明
(最近の医療情勢から手術の良い面より、頻度の低い合併症等の短所が強調される傾向がありますが、人工関節置換術は非常に良い手術であり医療側と患者側がきっちり合併症を認識し回避する手段を講じていれば、予防は可能です。)

(1)感染:人工関節置換術は体の中に異物を入れるので感染に弱く、また一度感染すると治りにくいという問題点があります。その頻度は約1%とされておりますが、特に糖尿病やステロイドを使用している方の感染率が高いと思われます。感染はあらゆる時期に起こりうります。その治療としては初期であれば抗菌剤投与と膝の洗浄を行いますが、その治療がうまくいかない場合、人工関節を抜去し抗菌剤入りの骨セメントによる仮の人工関節を入れ、3ヶ月後ぐらいに感染が治まってから再度人工関節を挿入するという方法をとります。感染を起こすと局所の熱感・疼痛・発赤が起き、歩けなくなるのでおかしいなと思ったらすぐに病院に連絡をしてください。腎盂腎炎や扁桃腺炎など細菌感染が関係している病気は早めに治療を受けて下さい。また虫歯、歯周病の際に感染することが多いので歯科受診をきちんとしていただくとともに、抜歯の際には感染の予防目的に抗菌剤を服用することを勧めます。
(2)深部静脈血栓症:下肢の深いところにある静脈内に血栓という血の塊が生じたもので、予防しないと30-50%の人に発生します。症状は下肢の疼痛と腫脹ですが、全く無症状のことも多くみられます。生じた血栓が肺に飛ぶと肺血栓塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)を引き起こします。この合併症の採血での診断率は80%ぐらいです。確定診断を下すには造影CTを行う必要がありますが、この検査をするのは通常肺血栓塞栓症を合併している恐れがあるときだけです。治療は抗凝固療法を行います(主にワーファリンという薬の内服を行いますが、まれに副作用で出血がおきることがあります)。ただし深部静脈血栓症は治療よりも予防が大切です。当院では血栓予防のための弾性ストッキングをはいていただき、手術中から血栓予防のフットポンプというマッサージの機械を足に着けます。しかしながら最も大切なことは足首を積極的に動かすことと、早い時期に体重をかけて歩くことです。最近では血栓予防のための注射薬(フォンダパリヌクスやエノキサパリン)も登場し当院でも血栓症の既往歴がある方や血栓症のリスクが極めて高い方に使用しています。
(3)肺血栓塞栓症:深部静脈血栓が肺に飛び肺動脈を詰まらせたもので通称エコノミークラス症候群とかロングフライト症候群と呼ばれています。深部静脈血栓症の予防をしないと5%ぐらいの頻度で出現し1000人に1人ぐらいは命を落とす可能性があると言われています。深部静脈血栓症を予防することにより、その頻度を1/2から1/5程度に減らすことが出来ます。
(4)腓骨神経麻痺:術後つま先が外側に倒れるような格好をして長く寝ていると神経が圧迫され麻痺が起こることがあります。麻痺が起きると足背がしびれたり、足首や足の親指の動きが悪くなることがあります。医療サイドでも適宜チェックしますがご自身でも足がしびれたり動きが悪いと思ったらすぐに知らせてください。
(5)金属アレルギー:人工関節はクローム・ニッケル・バナジウム・アルミ・チタンなどから作られています。錆びることはありませんがごくまれに金属アレルギーを起こすと言われています。自覚的にわかる症状は皮膚の慢性湿疹です。ひどいアレルギーの場合は人工関節を抜去せざるを得ないこともあります。
(6)高齢者特有の病気: 肺炎、不整脈、心筋梗塞、脳梗塞、ストレスによる胃・十二指腸潰瘍、イレウス(腸閉塞)、胆嚢炎、可逆性の見当識障害(一時的な呆け症状)など家でも起きるような高齢者特有の病気が入院中にたまたま起きてしまうことはあります。70歳以上の人の約5%に見られると言われています。
(7)皮膚の血行障害、知覚障害:皮膚が薄く血流の悪い人(特にステロイドを服用している方)は皮膚が部分的に壊死を起こしたり縫合不全を起こし、回復に時間がかかったり皮膚の手術を追加で行う必要が生じることもあります(1%)。また皮膚を切開すると当然皮膚の中を走行している細い知覚神経が切れます。その影響で特に膝の手術の後には皮膚切開外側の知覚が鈍くなることがありますが、次第に気にならなくなります。


F.入院までの流れ

(1)手術が決まったら全身の健康状態をチェックし、手術が安全に行えるかどうか判断します。糖尿病、心臓病等がある場合はあらかじめ外来で内科の専門医の受診をしていただきます。
(2)UKAはTKAとは違いあまり出血はしません。今まで輸血が必要になった人はなく、自己血を用意する必要はありません。
(3)当院のクリニカルパスに基づき。医師、看護師、理学療法士から手術の説明日程、入院前の準備、術後の経過、リハビリについて説明をいたします。
(4)担当の医師から、人工関節の説明、手術の方法、合併症の予防方法、術後の経過などについて、詳しく説明いたします。説明には20-30分ほど時間がかかります。必ず家族の方と一緒に説明を受けるようにしていただいております。


G.手術が決まったら次の点にご注意下さい

(1)喫煙:当院は敷地内全面禁煙となっております。入院中の喫煙は出来ません。喫煙習慣により麻酔後の痰が多くなったり、傷の治りが悪くなったりする可能性があります。また人工関節置換術とは直接関係はありませんが、喫煙により骨折の治癒が悪くなることや、椎間板を傷め腰痛や椎間板ヘルニアの原因になる可能性があるとされています。
(2)虫歯治療、歯周病治療:可能な限り手術の前に治療をすませておいて下さい。虫歯や歯周病が原因で口の中の細菌が血液中に入り、人工関節術後の感染の原因になる可能性があります。
(3)湿布:手術が決まったら貼らないようにお願いしています。患部に湿布かぶれがおきると手術を延期せざるを得ないことがあります。
(4)パナルジン、バイアスピリン、バファリン等血液をサラサラにする薬は手術時の出血が止まりにくくなることがありますので、1?2週間前から一時中止にしていただいております。医師の指示に従って下さい。


H.入院後の経過

入院日
(1)通常何の合併症の無い方は手術の前日に入院して頂きます。入院後病棟の案内、麻酔科の診察等があります。
(2)手術の前日の夜9時以降は禁食です。飲水は当日の朝7時まで可能です。
(3)人工関節の手術に際して浣腸は不要です。

手術当日(術前)
(1)人工膝関節の手術は火曜、水曜、金曜日の午後に行っています。
(2)朝8時頃点滴にまいります。
(3)麻酔は、麻酔科の医師が全身麻酔(眠って意識も痛みもない状態)に術後の痛みを緩和する持続硬膜外麻酔あるいは持続大腿神経麻酔を併用して行います。

手術
(1)当院ではMIS法にて手術を行っています。MIS法は従来の手術に比べ皮膚切開が短く(従来の手術10〜15cm、MIS法6.5cm)また筋肉への侵襲も少ないため術後の回復が早まります。
(2)手術の時間はおおよそ1時間10分です。手術室に入ってから出てくるまでにおよそ2時間半かかりますが、その間家族の方には待合室でお待ち頂いております。


I.リハビリ

リハビリは基本的に手術の直後から始まります。麻酔から覚めたらまず足首の運動を始めてください。その後足挙げ訓練も行います。人工膝の場合トイレには翌日から車いすで行っていただきますが、その移動の際体重を足にかけることは可能です。また膝に溜まった血液を抜くドレーンという管が抜けてからCPMという機械で膝の曲げ伸ばしを行います。理学療法士がレベルに応じた訓練を行いますが、通常は1週間以内に杖歩行が出来るようになります。入浴は術後1週で可能となります。術後1週過ぎから階段昇降訓練を始め、術後平均14日で退院可能となります。


J.人工関節の耐用年数

(1)現在使用している人工関節は10年持つ確率が90%前後あると言われています。ただし乱暴に扱ったり、骨粗鬆症が急速に進行し人工関節との間にゆるみを生じたりすると5年も持たない人もいます。人工関節は器械ですから激しく使えば使うほどすり減ってしまいます。そのとき出る摩耗粉が、人工関節周囲の骨を溶かすことがあります。散歩や運動をして筋肉を鍛えても人工関節そのものを鍛えることはできません。
(2)長持ちさせるためには過酷な使用を避けること、自分自身の骨を丈夫に保つことが大切です。
(3)骨粗鬆症の治療薬(ボナロン、ベネット、フォサマック、アクトネル)には骨を丈夫にして人工関節を長持ちさせる効果があるとされています。この薬はかかりつけ医でも処方してもらえます。カルシウムの補給のつもりで乳製品を多量に摂取しても骨は丈夫にはなりません、かえって体重が増えて膝に対する負担がかえって増えてしまいます。


K.退院後の注意点

(1)リハビリ:通院リハビリが全く不要の人と、退院後最大5ヶ月間の通院リハビリが必要な方もいらっしゃいます。リハビリは当院と病診連携をしている整形外科開業医でも受けることができます。
(2)半年〜1年に一度はレントゲンを撮影し骨の状態、人工関節の状態を確認します。
(3)退院直後から1日30-40分の散歩は構いません。筋力が回復してきたら遠出してデパート歩きやバスや飛行機での旅行を楽しんでいただいても構いませんが、重い荷物を持ち運ばないよう、ショッピングカートや宅配便を上手に利用してください。テニスの様に飛んだり跳ねたり走ったりといった運動をすることや山登りをすることはよくありません。カートを使えばゴルフをすることも可能です。

●人工股関節置換術について

(THA:Total Hip Arthroplasty)

@.THAの適応となる疾患

変形性股関節症、関節リウマチ、大腿骨頭壊死などです。

 

A.THAの適応となる症状

歩行時の股関節の痛み、跛行などの歩行障害、可動域制限(股関節の曲がりや伸びが悪いこと、あぐらが組めないこと)反対側膝関節や腰への負担増加による悪影響がある時などが挙げられます。

 

B.手術のタイミング

投薬・杖・減量・筋力増強・理学療法などの保存療法で治らない場合や、過去に骨切りの手術を受けたが痛みが再発した場合などが人工股関節の適応になります。60歳以上の方で、整形外科で一般的に行われている治療を1年以上続けても痛みが取れないときには人工関節の適応がある可能性がありますので、ご相談ください。

 

C.THAの長所

  1. 歩行時の痛みが楽になること

  2. 脚長差(脚の長さの左右の違い)が改善すること

  3. 歩行時の体の横揺れが取れて歩き方がきれいになること

  4. 他の関節や腰に対する負担が減ること

D.THAの短所

  1. リハビリを含め2〜4週間の入院が必要であること
    遠方の方は入院期間が長くなる傾向があります。また、人によっては退院後もリハビリを続ける必要があります。

  2. 医療費が高額であり、保険を使わないと200万円近くかかること
    実際には医療費3割負担の方が窓口でお支払いして頂く金額は約60万円ですが、高額医療の対象となりますので最終的な自己負担額限度額は10-20万円程になります(年齢、年収により異なります)。約3ヶ月後に各保険組合事務所から差額分を返金されます。70歳以下の方は「限度額適用認定書」の交付を各保険組合事務所にあらかじめ申請しておくと病院窓口での支払いが自己負担限度額までとなり、立て替え払いをする必要がなくなりますので是非利用してください。ちなみに70歳以上の方で年収383万円未満の方の1ヶ月の自己負担額は44、400円です(これに食費が加算されます)。

  3. 一生もつとは限らないこと

  4. 各種合併症が起きる可能性があること

E.合併症の説明
(最近の医療情勢から手術の良い面より、頻度の低い合併症等の短所が強調される傾向がありますが、人工関節置換術は非常に良い手術であり医療側と患者側がきっちり合併症を認識していれば、予防は可能です。)

(1)感染:人工関節置換術は体の中に異物を入れるので感染に弱く、また一度感染すると治りにくいという問題点があります。その頻度は約1%とされておりますが、特に糖尿病やリウマチ歴の長い方の感染率が高いと思われます。感染はあらゆる時期に起こりうります。その治療としては初期であれば抗菌剤投与と股関節の洗浄を行いますが、その治療がうまくいかない場合、人工関節を抜去し抗菌剤入りの骨セメントによる仮の人工関節を入れ、3ヶ月後ぐらいに感染が治まってから再度人工関節を挿入するという方法をとります。感染を起こすと局所の熱感・疼痛・発赤が起き、歩けなくなるのでおかしいなと思ったらすぐに病院に連絡をしてください。腎盂腎炎や扁桃腺炎など細菌感染が関係している病気は早めに治療を受けて下さい。また虫歯、歯周病や抜歯の際に感染することが多いので歯医者さんでの治療の際は予防的に抗菌剤を服用することを勧めます。
(2)深部静脈血栓症:下肢の深いところにある静脈内に血栓という血の塊が生じたもので、予防しないと30-40%の人に発生します。症状は下肢の疼痛と腫脹ですが、全く無症状のことも多くみられます。生じた血栓が肺に飛ぶと肺血栓塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)を引き起こします。この合併症の採血での診断率は80%ぐらいです。確定診断を下すには造影CTを行う必要がありますが、この検査をするのは通常肺血栓塞栓症を合併している恐れがあるときだけです。治療は抗凝固療法を行います(主にワーファリンという薬の内服を行いますが、まれに副作用で出血がおきることがあります)。ただし深部静脈血栓症は治療よりも予防が大切です。当院では血栓予防のための弾性ストッキングをはいていただき、手術中から血栓予防のフットポンプというマッサージの機械を足に着けます。しかしながら最も大切なことは足首を積極的に動かすことと、早い時期に体重をかけて歩くことです。最近では血栓予防のための注射薬(フォンダパリヌクスやエノキサパリン)も登場し当院では血栓症の既往歴がある方や血栓症のリスクが極めて高い方に使用しています。
(3)肺血栓塞栓症:深部静脈血栓が肺に飛び肺動脈を詰まらせたもので通称エコノミークラス症候群とかロングフライト症候群と呼ばれています。深部静脈血栓症の予防をしないと5%ぐらいの頻度で出現し1000人に1人ぐらいは命を落とす可能性があると言われています。深部静脈血栓症を予防することにより、その頻度を1/2から1/5程度に減らすことが出来ます。
(4)腓骨神経麻痺:術後つま先が外側に倒れるような格好をして長く寝ていると神経が圧迫され麻痺が起こることがあります。麻痺が起きると足背がしびれたり、足首や足の親指の動きが悪くなることがあります。医療サイドでも適宜チェックしますがご自身でも足がしびれたり動きが悪いと思ったらすぐに知らせてください。
(5)金属アレルギー:人工関節はクローム・ニッケル・バナジウム・アルミ・チタンなどから作られています。錆びることはありませんがごくまれに金属アレルギーを起こすと言われています。自覚的にわかる症状は皮膚の慢性湿疹です。ひどいアレルギーの場合は人工関節を抜去せざるを得ないこともあります。
(6)高齢者特有の病気: 肺炎、不整脈、心筋梗塞、脳梗塞、ストレスによる胃・十二指腸潰瘍、イレウス(腸閉塞)、胆嚢炎、可逆性の見当識障害(一時的な呆け症状)など家でも起きるような高齢者特有の病気が入院中にたまたま起きてしまうことはあります。70歳以上の人の約5%に見られると言われています。
(7)皮膚の血行障害、知覚障害(1%):皮膚が薄く血流の悪い人(特にステロイドを服用している方)は皮膚が部分的に壊死を起こしたり縫合不全を起こし、回復に時間がかかったり皮膚の手術を追加で行う必要が生じることもあります。また皮膚を切開すると当然皮膚の中を走行している細い知覚神経が切れます。その影響で特に膝の手術の後には皮膚切開外側の知覚が鈍くなることがありますが、次第に気にならなくなります。
(8)人工股関節の脱臼(3-5%) :本来股関節の周囲には関節包という強靱な袋があり、そう簡単には脱臼しないようになっていますが、人工股関節置換術後早期には関節の周りを支える組織は弱く脱臼しやすいので注意が必要です。特に術後3-4カ月以内は脱臼しやすい時期です。手術の方法により脱臼しやすい格好は異なります。必ず主治医にご確認ください。


F.入院までの流れ

(1)手術が決まったら全身の健康状態をチェックし、手術が安全に行えるかどうか判断します。糖尿病、心臓病等がある場合はあらかじめ外来で内科の専門医の受診をしていただきます。
(2)人工股関節置換術では、術中術後に併せて1000cc近くの出血が見込まれます。そのため当人工関節センターでは輸血を回避するためあらかじめ外来で自己血を800cc準備します(400ccの自己血貯血を2回行います)。
(3)当院のクリニカルパスに基づき。医師、看護師、理学療法士から自己血採血日、手術の説明日程、入院前の準備、術後の経過、リハビリについて説明をいたします。
(4)担当の医師から、人工関節の説明、手術の方法、合併症の予防方法、術後の経過などについて、詳しく説明いたします。説明には20-30分ほど時間がかかります。必ず家族の方と一緒に説明を受けるようにしていただいております。


G.手術が決まったら次の点にご注意下さい

(1)喫煙:当院は敷地内全面禁煙となっております。入院中の喫煙は出来ません。喫煙習慣により麻酔後の痰が多くなったり、傷の治りが悪くなったりする可能性があります。また人工関節置換術とは直接関係はありませんが、喫煙により骨折の治癒が悪くなることや、椎間板を傷め腰痛や椎間板ヘルニアの原因になる可能性があるとされています。
(2)虫歯治療、歯周病治療:可能な限り手術の前に治療をすませておいて下さい。虫歯や歯周病が原因で口の中の細菌が血液中に入り、人工関節術後の感染の原因になる可能性があります。
(3)湿布:手術が決まったら貼らないようにお願いしています。患部に湿布かぶれがおきると手術を延期せざるを得ないことがあります。
(4)パナルジン、バイアスピリン、バファリン等血液をサラサラにする薬は手術時の出血が止まりにくくなることがありますので、1?2週間前から一時中止にしていただいております。医師の指示に従って下さい。


H.入院後の経過

入院日
(1)通常何の合併症の無い方は手術の前日に入院して頂きます。入院後病棟の案内、麻酔科の診察等があります。
(2)手術の前日の夜9時以降は禁食です。飲水は当日の朝7時まで可能です。
(3)人工関節の手術に際して浣腸は不要です。

手術当日(術前)
(1)人工膝関節の手術は火曜、水曜、金曜日の午後に行っています。
(2)朝8時頃点滴にまいります。
(3)麻酔は、麻酔科の医師が全身麻酔(眠って意識も痛みもない状態)に術後の痛みを緩和する持続硬膜外麻酔を併用して行います。

手術
(1)当院ではMIS法にて手術を行っています。MIS法は従来の手術に比べ皮膚切開が短く(従来の手術15〜20cm、MIS法10cm)また筋肉への侵襲も少ないため術後の回復が早まります。
(2)手術の時間はMIS人工股関節置換術でおおよそ1時間45分です。手術室に入ってから出てくるまでにおよそ3時間かかりますが、その間家族の方には待合室でお待ち頂いております。
手術当日(術後)
(1)尿道には排尿のための管が入っています。
(2)当日の夜はリカバリー室(回復室)で一晩経過を見ます。
(3)深部静脈血栓症予防のために弾性ストッキングとフットポンプを装着します。


I.リハビリ

リハビリは基本的に手術の直後から始まります。麻酔から覚めたらまず足首の運動を始めてください。その後足挙げ訓練も行います。人工股関節の場合はなるべく車いすは使用せず、ドレーン抜去とともに歩行器で荷重歩行を行います。理学療法士がレベルに応じた訓練を行いますが、通常は1週間前後で杖歩行が出来るようになります。入浴は術後1週で可能となります。術後2週過ぎ頃から階段昇降訓練を始め、術後約1ヶ月で退院可能となります。


J.人工関節の運命

(1)現在使用している人工関節は10年持つ確率が95%、20年持つ確率も80%前後あると言われています。ただし乱暴に扱ったり、骨粗鬆症が急速に進行し人工関節との間にゆるみを生じたりすると5年も持たない人もいます。人工関節は器械ですから使えば使うほどすり減ってしまいます。そのとき出る摩耗粉が、人工関節周囲の骨を溶かすことがあります。散歩や運動をして筋肉を鍛えても人工関節そのものを鍛えることはできません。
(2)長持ちさせるためには過酷な使用を避けること、自分自身の骨を丈夫に保つことが大切です。
(3)骨粗鬆症の治療薬(ボナロン、ベネット、フォサマック、アクトネル)には人工関節を長持ちさせる効果があるとされています。この薬はかかりつけ医でも処方してもらえます。カルシウムの補給のつもりで乳製品を多量に摂取しても骨は丈夫にはなりません、かえって体重が増えて膝に対する負担がかえって増えてしまいます。


K.退院後の注意点

(1)リハビリ:通院リハビリが全く不要の人と、退院後最大5ヶ月間の通院リハビリが必要な方もいらっしゃいます。リハビリは当院と病診連携をしている整形外科開業医でも受けることができます。
(2)半年〜1年に一度はレントゲンを撮影し骨の状態、人工関節の状態を確認します。
(3)退院直後から1日30-40分の散歩は構いません。筋力が回復してきたら遠出してデパート歩きやバスや飛行機での旅行を楽しんでいただいても構いませんが、重い荷物を持ち運ばないよう、ショッピングカートや宅配便を上手に利用してください。テニスの様に飛んだり跳ねたり走ったりといった運動をすることや山登りをすることはよくありません。カートを使えばゴルフをすることも可能です。

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