絆71号

派閥政治の終焉

こんにちは、衆議院議員の桜田義孝です。本日は、『派閥』の問題を取り上げたいと思います。ご存知のとおり、先に私の所属する平成研究会の橋本龍太郎元首相が派の会長を辞め派そのものも退会し、次回の総選挙には小選挙区から出馬しないことを表明しました。日歯連からの1億円の小切手授受を巡っての不適正な会計処理で会に迷惑をかけた責任をとったかたちでありますが、私はこうした決断は当然であると思っています。いずれにせよ、1億円という膨大な政治資金について「自分の記憶にない」ということでは到底国民の理解を得ることはできません。
 今回のこの結果については、いろいろな見方があるでしょうが、私はとにもかくにも『年金問題』であったと思います。強行採決のイメージと少子高齢化を原因とする先行き不透明感が、膨大な反自民票となって現れたというのが真相でしょう。また、岡田党首は新鮮なイメージがあった一方で、政権を担って三年以上経つ小泉総理は、さすがに国民から見て新鮮なものではなくなったということもありましょうか。

 しかし、今回、橋本会長が身を引き橋本派が混乱している中で、再び「派閥」というものの存在意義が問われてきました。皆様方ご存知のとおり、私は先の自民党総裁選において、小泉総裁の再選を支持しました。今でも私のとった行動は正しかったと確信していますが、このとき、わが派は橋本派の次代のプリンスと言われていた藤井孝男氏を押すグループと、我々のように小泉総理を支持する主として参議院を中心としたグループに事実上分裂しました。結局、党員投票も含めて小泉総理が勝ったわけですが、当然といえば当然の結果でした。小泉総理に比べればどの候補も迫力不足・内容不足でありましたし、何より国民に不人気でした。これまでの派閥は「総理総裁を出す」という絶対命題があって、資金を集め、『一致結束箱弁当』とまで言われた鉄の団結を誇ってきましたが、今やその存在感・影響力は衰微しています。
 
 理由はいろいろありますが、まず、野党が力をつけていく中で、永田町の論理だけで総理総裁が生み出せない時代になってきました。やはり小選挙区制度の導入が大きかったと思います。小選挙区になりますと、党対党の戦いになりますから、政権党も野党も国民的に人気のある人物を総理候補として戦う必要があります。しかし、人気と、集金力・党内地位は必ずしも比例しません。小泉さんも党内では変人扱いであったわけで、某派閥のボス等をみれば人気と集金力は逆に反比例するくらいです。

 つまり、人物イメージに関係なく派閥でお金を使って政策抜きで総理総裁を作るということが事実上できなくなってしまったのです。むしろ選挙を行う上で顔になるような小泉さんのような総理総裁が期待されるようになりました。こうなると派閥の意義・意味は大きく失われます。総理総裁製造装置としての派閥はもはや機能しないでしょう。

 また、派閥の資金力そのものも格段に落ちています。私はこれは政治とカネの問題を経ての当然の帰結であると評価しています。もう派閥でお金を集める時代は終わりました。よく派閥というと所属議員にお金を配っていると思われがちですが、自分が派閥に納めるお金ともらうお金について今ではあまり相違がなくなりました。もらえるのは選挙のときの多少の資金程度であり、派閥に資金を頼る時代は終わったとさえいえます。現在、ほとんど派閥でお金を集める意味がなくなっているのです。このように派閥からの支援が衰微しているわけですから、派閥の所属メンバーも自由闊達にモノを発言したり、行動したりするようになります。つまり、派閥の縛りが効かなくなっているのです。

 この間、派閥イメージも良くはありません。最近先輩格にあたる熊代昭彦議員は橋本派を離脱しましたが、それだけ選挙向けにも派閥イメージというのは悪くなっています。特に橋本派は代表的な抵抗勢力としてメディア等にもさんざん叩かれてきました。私にいわせれば橋本さんだって、総理のときは比較的人気があり、また、今の構造改革の大元を作ったのは橋本さんでありました。しかし、時が経つと状況や人の評価というのはここまで違ってしまうものかと改めて恐ろしさを感じます。つまり、国民からみて派閥を評価する声は今や皆無でしょう。

 お金もなく人気もないそうした派閥はなくなるのでしょうか。そしてなくすべきでしょうか。「桜田さんはここまで派閥の問題というのがわかっていて何故橋本派を辞めないのか」、こういう厳しい質問が今すぐ飛んできそうです。しかし、これに対する答えは明確です。 

 まず、今までは派閥のデメリットについて申し述べてきましたので、次に派閥のメリットについて述べる必要があります。まず、第一に政治は数であるという大原則です。私達は日々官僚と丁丁発止のやり取りをして、委員会での質問を政策に反映させたり、行政と直接交渉を行うことが仕事であります。官僚もしたたかですから、この政治家がどの程度のものなのか、言うことを聞いた方がいいのか、無視しても大丈夫か、こういうことを日々考えながら政治家の相手をしています。ですから、どの党なのか、無派閥なのか等をいろいろ気にします。そうしたときに官僚になめられないためにも一定の政策集団に所属するメリットというのはそれはそれであるのです。つまり、官僚をコントロールするには派閥は有効です。自分の主張する政策を実現し、国民に直結する課題に応えていくには支援してくれる議員団が絶対必要です。誤解を覚悟で言いますと政治家というのは一人では何もできません。元橋本さんの首相秘書官で衆議院議員だった人が今でもいいたい放題テレビで言っていますが、結局無所属でほとんど何もできなかったのです。数は力という点は民主主義の原則ともいえます。

 また、政治家にとって情報も肝心です。無派閥であると政局や政策絡みの情報はほとんど入ってこきません。我々は生きるか死ぬかの中で日々戦っており、こうした情報収集・情報交換の場としての派閥については大きなメリットがあります。加えて派閥は人材研鑚の場でもあります。政治家はそれぞれが最終的には総理大臣を目指しています。そうした人材が派閥という場で研鑚し合うということで、いわば人事研修の場を提供していることになるのです。
 
 以上のように私が平成研究会を今もって抜けないのはそれなりに効用があるからです。政治家として仕事をする以上、メリットがあるのであればそうした機会を最大限活用するのは当然であると思います。しかし、派閥に対する国民の不信がここまでなった以上、私としても手をこまねいて見ているわけにはいきません。私は早速当選三期生と共に会議を開き、次期派閥会長については思い切って若返りを図るよう行動していくことを決めました。これからの派閥は事実上、お金を集めたりしない、真の政策集団にし、国民にとって望ましい総理総裁候補を育成する場にしていく必要があります。ですから、高い賃料のかかる事務所はすべて閉鎖し、党本部にでも事務所を移転すれば良いというのが持論です。また、派閥間でエネルギーを使っている暇があったら、民主党に対抗できる対野党戦略というものに力を注ぐべきです。この点、今の幹部の方々には危機感というものがほとんどない。誠に嘆かわしいことです。このままでは自民党は壊滅します。自民党が国民からみて真に生まれ変わったと言われるように、党も派閥も根本から改革していくことこそ、自民党に残された最後のチャンスなのです。

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