山形県における林業関係従事者の振動病に関する調査研究


主任研究者 山形産業保健推進センター所長 渡 辺 徳 夫
共同研究者 山形産業保健推進センター 鈴 木 康 洋

                                              

1.はじめに

 山形県における林業関係従事者は約1,000人といわれている。従事者に対する振動障害の検診は林材業労働災害防止協会山形県支部が中心となって毎年実施されているところである。振動検診と健康管理は法定外の指導勧奨によるものとされているため、個々の事業主の理解に負うところが多く、その産業保健活動の実態にはなお把握し難いところである。そこで、本研究では県内の林業関係従事者における産業保健活動の現状を調査し、問題の所在を明らかにして、振動障害防止対策としての健康管理に資するとともに、林業以外で振動工具を使用している関係団体等に広報する等、当センターの産業保健支援サービスの充実を図ることとした。

2.調査方法

 対象は山形県内の民有林の林業・木材製造業に従事する労働者で、平成11年10月、林材業労働災害防止協会山形県支部が実施した振動障害特殊健康診断を受診した408名である。調査は質問票(職歴調査票および自覚症状調査票など)を用いたアンケート調査により調査員の面接問診で実施した。

3.調査結果および考察

(1)調査対象者の年齢

 調査対象者の年齢構成をみると、60才代が最も多く、50才代、70才代の順であった。平均年齢は56.3才で、最高齢は80才である。60才以上で58.5%を占め高齢化傾向が著名である。

(2)山林労働の経験年数

 図―1に山林労働の経験年数を示す。30年以上が最も多く、20年以上、10年以上の順であった。最高年齢は60年である。1年未満は3.0%であった。20年以上の長期年数が58.5%を占めた。

図―1 対象作業者の従事年数

(3)チェーンソーの使用年数

  チェーンソーの使用年数は30年以上が最も多く、20年以上、10年以上の順で経験年数と同様な傾向を示した。最高年数は50年であった。

(4)チェーンソーの使用日数(1年間)

 図ー2に1年間にチェーンソーを使用した日数を示す。90日以上(3ヶ月)が最も多く、30〜59日、30日未満の順であった。最高280日であるが30日未満も25.5%を占めていて、ばらつきが見られた。

図―2 チェンソーの使用日数

(5)1日の作業時間

 2.5時間が1名で、407名は3時間以上であった。そのうち227名(55.6%)は8時間従事していた。作業内容は伐採、下刈、地ごしらえ等である。取り扱い機器はチェーンソーと刈払機である。8時間を超えて作業している者は見られなかった。

(6)休憩時間

 1時間以上が98.5%である。2時間が34.3%にのぼり、十分な休憩時間を取っていることがうかがわれる。

(7)作業時の手袋着用率

 「常に着用している」が96.5%(394名)、「時々着用している」が2.4%(10名)、「着用しない」が1.1%(4名)であった。直接影響を受ける部位への障害防止策の対応がなされていることがわかった。

(8)作業時の耳栓着用率

 「常に着用している」が11.7%(48名)、「時々着用している」が17.6%(72名)、「着用しない」が70.7%(288名)であった。耳栓着用率が非常に低率であることは、作業者の健康への影響(聴力障害の発生等)が懸念されるところである。直接影響を受けない部位への障害防止策の対応が急務である。

(9)喫 煙 量

 たばこの本数は、20本台が最も多く、10本台、30本台の順であった。最高本数は60本であったが、非喫煙が53.7%と、喫煙を上回ったことからも判るように喫煙率および量ともに低下傾向にあることがわかった。

(10)身体を冷やさないための対策

 身体を冷やさないための対策については、対象者全員が講じていた。その主なものは、防寒衣を着用する、休憩中に小屋の中で火をたいて暖を取る、あたたかい物を食べるようにしている等である。

(11)作業時における出現する症状
 

 表―1に作業時に出現する症状とその割合を示す。
                                                   

        表―1 作業時に出現する症状    n=408
症   状 人 数 割合(%)
手指が白くなることがある 25 6.1
手指がしびれる 33 8.1
手指がいたむ 40 9.8
疲れる 37 9.0
腰がいたい 31 7.6
肩がこる 30 7.4

                                                                      

 振動障害の特有の症状とされているいわゆるレイノー症状出現が6.1%にみられた。また以前にくらべて増加傾向にあるとした者が3名にみられた。予防策がおおむねにおいて講じられ実行されていることがうかがわれる。発生源対策としてチェーンソーや刈払機等の振動工具を軽いものにしたり、また、防振装置内臓のものに買い直した者は75%に達している。

4.おわりに

 山形県の林業関係従事者は予想された以上に高齢化が進んでいる業種であることがわかった。なかでも80才にしてなお現役で従事されている事実に象徴されているといえよう。
 昭和50年より毎年実施されてきた振動病検診による健康管理が振動障害防止に大きな役割を果した事は認められるところであり、継続しての検診の重要性が改めて認識されるところである。
 今後の振動障害防止対策は「耳栓の着用」および「禁煙」に重点を置いて講ぜられるべきであると考える。
 本調査で明らかになった現状を踏まえて、地域産業保健センター等の関係諸機関及び振動工具を使用している関係諸団体と連携を一層密にして、事業場における振動障害防止の活動を活性化させなければならない。


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